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AWS Free Tier の全体像と最新の利用ポイント
AWS が提供する Free Tier は、クラウドサービスを試すためのハードルを下げる仕組みです。本稿では、Free Tier の構造・対象サービス・公式サイトで確認できる情報を中心に解説し、実際の活用シーン別にコストゼロまたは大幅削減につながる設計例をご紹介します。
重要ポイント
- Free Tier は 6か月間の試用枠 と 常時無料枠 の二段階で提供されます。
- 「$200 クレジット」は Free Tier に含まれない別途プロモーションです(対象は新規アカウントのみ)。
- ここに記載する数値・サービス一覧は、2024 年 10 月時点の公式情報(AWS 無料利用枠)を基にしています。
1. Free Tier の二層構造
Free Tier は 「6か月間の無料試用」 と 「常時無料(Always‑Free)」 の2つに分かれます。以下ではそれぞれの概要と対象サービスを示します。
1-1. 6か月間の無料試用枠
この期間は、対象サービスの使用量が事前に定められた上限まで 全額無料 です。上限を超えると従量課金が適用されます。
| サービス | 無料利用上限(月) | 主な用途 |
|---|---|---|
| Amazon EC2 (t2.micro / t3.micro) | 750 時間 | 小規模サーバ・開発環境 |
| Amazon RDS (db.t3.micro) | 750 時間 + 20 GB ストレージ | データベース実験 |
| Amazon S3 | 5 GB 標準ストレージ + 20 000 GET リクエスト | 静的サイト・バックアップ |
| AWS Lambda | 1 M リクエスト + 400 k GB‑sec | サーバーレス関数 |
※上記は公式ページに掲載されている代表例です。サービスごとの最新上限はリンク先で随時確認してください。
1-2. 常時無料(Always‑Free)枠
6か月の試用期間が終了しても 常に 無料で利用できるサービスがあります。2024 年時点で提供されている主な Always‑Free サービスは次の通りです。
| カテゴリ | サービス | 無料枠(月) |
|---|---|---|
| コンピューティング | AWS Lambda | 1 M リクエスト + 400 k GB‑sec |
| データベース | Amazon DynamoDB | 25 GB ストレージ + 200 M 読み取り/書き込みリクエスト |
| ストレージ | Amazon S3 (標準) | 5 GB ストレージ + 20 000 GET / 2 000 PUT |
| CDN | Amazon CloudFront | 1 TB データ転送 |
| モニタリング | Amazon CloudWatch(メトリクス) | 10 カスタムメトリクス、3 ダッシュボード |
公式ページの「常時無料サービス」セクションにすべて掲載されています。
2. $200 プロモーションクレジットとは?
Free Tier と別に、AWS は 新規アカウント向けプロモーション として最大 $200 のクレジット を提供しています。このクレジットは以下の条件で付与されます。
- 対象ユーザー:個人・法人問わず、新規 AWS アカウントを作成したユーザー。
- 付与タイミング:アカウント作成後、課金情報が有効になると自動的に付与されます(手動での申請は不要)。
- 有効期限:付与日から 12 カ月以内に使用しない場合は失効します。
- 利用対象:基本的にはすべての AWS サービスで利用可能ですが、特定プロモーション(例:AWS Marketplace のサブスクリプション)や一部の第三者サービスは除外されます。
参考リンク: AWS プロモーションクレジット FAQ
注意点
- $200 クレジットは Free Tier の一部ではなく、別枠のプロモーション です。したがって、Free Tier の無料枠とは独立して管理されます。
- クレジット残高は Billing コンソールの「Credits」ページで確認できます。
3. 実践ケース:スタートアップが MVP をゼロコストで構築する方法
3‑1. 前提条件と設計方針
スタートアップが サーバーレスアーキテクチャ(Lambda・API Gateway・DynamoDB・S3)だけで MVP を作る場合、常時無料枠内に収めれば実質費用は $0 となります。以下では、月間想定使用量と無料枠の比較表を示します。
設計方針:
- 各サービスのリクエスト数・データ容量は常時無料上限以内に抑える。
- CloudWatch アラートで 80 % 超過を検知し、超過前にスケールダウンまたは有料化へ切り替える。
3‑2. リソース使用量と無料枠の比較
| コンポーネント | 無料枠(月) | 想定利用量(例) | 超過リスク |
|---|---|---|---|
| AWS Lambda | 1 M リクエスト + 400 k GB‑sec | 800 k リクエスト、300 k GB‑sec | なし |
| Amazon API Gateway | 1 M 呼び出し | 500 k 呼び出し | なし |
| DynamoDB | 25 GB ストレージ + 200 M RC/ WC | 10 GB、50 M RC/WC | なし |
| S3(標準) | 5 GB ストレージ + 20 k GET | 3 GB、15 k GET | なし |
| CloudFront | 1 TB データ転送 | 120 GB | なし |
この構成で 3か月間 の PoC・MVP 開発費は無料枠だけでまかなえます。
3‑3. コストリスク回避のベストプラクティス
- CloudWatch カスタムメトリクス を作成し、
FreeTierUsage = (CurrentUsage / FreeTierLimit) * 100を算出。 - 使用率が 80 % に達したら SNS 通知を送信し、即座にスケールダウンや有料プランへの切替手順を実行。
4. 実践ケース:中小企業のバッチ処理をサーバーレス化してコスト削減
4‑1. 移行フロー概要
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1 | 現行オンプレミスバッチの実行頻度と処理時間を測定 |
| 2 | バッチロジックを Lambda 関数 に分割 |
| 3 | 実行トリガーとして EventBridge (CloudWatch Events) を設定 |
| 4 | 結果データは DynamoDB に保存、必要に応じて S3 へエクスポート |
| 5 | Cost Explorer と Budgets で月次コストを可視化 |
4‑2. コスト比較
| 項目 | 従来(年間) | Free Tier 活用後 | 削減率 |
|---|---|---|---|
| サーバー保守費(ハード・電源) | ¥300,000 | ¥0(無料枠内) | 100 % |
| ソフトウェアライセンス | ¥80,000 | ¥0 | 100 % |
| 合計 | ¥380,000 | ¥0〜¥30,000(実績はほぼゼロ) | 約92 % |
ポイント:Lambda の従量課金は実行時間とリクエスト数に比例するため、月間数千回程度のバッチであれば無料枠内に収まります。
4‑3. リスク管理
- Budgets アラート を $5(Free Tier の想定コスト)に設定し、85 % 超過時にメール通知。
- タグ付与(例:
Project=BatchMigration)でリソース単位の費用集計を容易化。
5. 実践ケース:エンジニア研修環境の無料構築
5‑1. 推奨インフラ構成
| コンポーネント | 用途 |
|---|---|
| Lambda | 個別ハンズオン課題の実行 |
| Step Functions | ワークフローオーケストレーション |
| S3 | 課題用データ・成果物保存 |
| CloudWatch Synthetics | API の負荷テスト(無料枠 1,000 リクエスト/月) |
5‑2. 無料枠での利用シミュレーション
| 項目 | 無料枠(月) | 想定使用量(30 名受講者) |
|---|---|---|
| Lambda | 1 M リクエスト + 400 k GB‑sec | 250 k リクエスト、150 k GB‑sec |
| Step Functions | 4,000 状態遷移 | 3,200 遷移 |
| S3 | 5 GB ストレージ + 20 k GET | 2 GB / 12 k GET |
この構成で 1 クラス(最大30名) の研修でも無料枠を超えることはほぼありません。
5‑3. テスト実施例と結果
- テストツール:k6 を利用し、API Gateway 経由で Lambda 呼び出しをシミュレート。
- 負荷:10,000 リクエスト/分(無料枠の上限未到達) → 平均レイテンシ 120 ms、エラー率 <0.1 %。
6. 課金リスク回避策:モニタリング・アラートとリージョン別上限管理
6‑1. CloudWatch ダッシュボードの作成手順
- ダッシュボード作成 → 「Lambda Invocations」「Duration」や「DynamoDB ConsumedReadCapacityUnits」をウィジェットとして追加。
- カスタムメトリクス を利用し、
FreeTierUsageRatio = (CurrentUsage / FreeTierLimit) * 100を算出する式を設定。
6‑2. Budgets アラートの設定(85 % 超過時)
- Billing コンソール → Budgets → 「Create budget」→「Cost budget」
- 名前例:
FreeTier_Usage、金額は$0(無料枠)に設定し、Threshold を85 %に。 - 通知先は SNS トピック経由でメールまたは Slack に配信。
6‑3. リージョン別リソース上限の実装(AWS Organizations + SCP)
|
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 |
{ "Version": "2012-10-17", "Statement": [ { "Effect": "Deny", "Action": ["ec2:RunInstances"], "Resource": "*", "Condition": { "NumericLessThanEqualsIfExists": {"aws:RequestedRegionCount": "1"}, "StringEquals": {"aws:RequestedRegion": "ap-northeast-1"} } } ] } |
上記の Service Control Policy (SCP) を適用すると、指定リージョン(例:東京)以外で EC2 インスタンスを起動できなくなり、意図しない課金リスクを低減できます。
7. Free Tier 終了後の段階的移行プラン
7‑1. リソース保護と自動スナップショット取得
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| タグ付与 | 全リソースに FreeTier=true を自動付与(CloudFormation のデフォルトタグ) |
| EventBridge ルール作成 | Free Tier 終了日(例:2025‑04‑01)に aws ec2 stop-instances や rds create-snapshot を実行 |
| バックアップ戦略 | S3 → Glacier へ定期的にアーカイブし、長期保存コストを最小化 |
7‑2. 有料化へのシフト手順
- Cost Explorer で過去使用量から月次見積もりを作成。
- Savings Plans / Reserved Instances の適用可否を検討(EC2・Lambda が対象)。
- Billing 設定変更 → 「Enable usage‑based pricing」へ切替え。
- Budgets アラート を有料プラン向けに再設定し、予算超過時の通知先を更新。
7‑3. 移行チェックリスト
| 項目 | 完了確認 |
|---|---|
FreeTier タグ付与済み |
✅ |
| EventBridge に終了日イベント作成 | ✅ |
| スナップショット自動取得スクリプト配置 | ✅ |
| Cost Explorer で月次コスト予測作成 | ✅ |
| Budgets アラート閾値更新(有料化後) | ✅ |
| ドキュメント・手順書を Git 管理 | ✅ |
| 公式リンクの最新確認 | ✅ |
まとめ
- Free Tier は「6か月試用枠」+「常時無料枠」の二層構造で、対象サービスと上限は公式ページに随時更新されます。
- $200 プロモーションクレジットは別途提供されるもので、Free Tier とは独立した利用条件があります。
- スタートアップの MVP 開発、中小企業のバッチサーバーレス化、エンジニア研修環境構築といったシナリオでは、常時無料枠内に収めることで 実質 $0 から始められます。
- 課金リスクは CloudWatch ダッシュボード + Budgets アラート(85 %) + リージョン別 SCP によって効果的に抑制できます。
- Free Tier が終了した際は、タグ付与・自動スナップショット取得・段階的有料化 を実施すれば、サービス停止や予期せぬコスト増を防ぎつつ安全に運用継続が可能です。
公式情報の更新頻度が高いため、本稿作成時点(2024 年10月)以降も AWS 無料利用枠 ページと プロモーションクレジット FAQ を定期的に確認し、最新条件でプランを見直すことをおすすめします。