Zapier

ZapierとRPAの比較・選び方とハイブリッド活用事例

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Zapier の概要と iPaaS/ノーコードツールとしての位置付け

このセクションでは、Zapier が提供する「API 連携をノーコードで実現」する仕組みと、利用シーンで意識すべきポイントを解説します。業務担当者が自ら自動化フローを構築できる点は、開発リソースが限られる中小企業にとって重要な利点です。

Zapier は SaaS 同士を API 経由で接続 し、「トリガー + アクション」形式のワークフロー(以下「Zap」)をドラッグ&ドロップだけで作成できます。公式ドキュメントによると、2023 年時点で 5,000 種類以上のアプリが Zapier のカタログに登録 されています【1】。また、Zap 内に 「Code」ステップ を挿入でき、JavaScript(Node.js)や Python(標準モジュール)の軽微なロジックを実行可能です。

コード実行機能(JavaScript / Python)と利用制限

コードステップは柔軟性を提供しますが、実装上の制約があります。以下に主要な制限事項をまとめます。

  • 実行時間:最大 10 秒(有料プランでも同一)。長時間処理はタイムアウトになるため、バッチ処理には不向きです【2】。
  • 使用可能ライブラリ:Node.js の標準モジュールと Python 標準ライブラリのみ利用可。外部パッケージのインストールはできません。
  • 入力サイズ:1 回のステップで扱えるデータは最大 100 KB。大容量ファイルは S3 等に一時保存し、別ステップで参照します。

上記制限を踏まえ、「軽微な変換」や「条件分岐」程度のロジック に留め、計算負荷が高い処理は AWS Lambda などの外部サーバーレスに委譲する設計が推奨されます。


RPA の基本概念とデスクトップ/ブラウザ操作の特徴

本節では、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)がどのように UI 操作を自動化し、API が未整備な業務でも対応できるかを説明します。レガシーアプリや社内独自システムが残る環境では、RPA の有用性が特に高まります。

RPA は人間の マウス・キーボード操作 を画面要素(ボタン、テキストフィールド等)単位で記録し、ロボットとして再現します。主要ベンダーの公式資料によると、UiPath と Automation Anywhere の市場シェアはそれぞれ 約 30%・20% を占めており、導入実績が豊富です【3】。

代表的ツール例(UiPath、Automation Anywhere、Power Automate Desktop)

ツール 主な特徴 デプロイ形態 向いている業務
UiPath ビジュアルフローデザイナ、豊富なアクティビティライブラリ Windows クラウド/オンプレミス 事務処理・データ入力
Automation Anywhere AI OCR 機能、集中管理コンソール SaaS とハイブリッド 請求書処理・レガシーアプリ連携
Microsoft Power Automate Desktop Windows 標準搭載、Office 製品との高い親和性 ローカルインストール 社内ツール自動化

各ツールは ノーコード でフローを設計できますが、内部的に VBA や PowerShell といったスクリプトを書き込むことも可能です。


Zapier と RPA の主要な違い

このセクションでは、両者の対象領域・実装方法・保守性などを比較し、導入判断の材料となるポイントを整理します。目的に合わせて最適な自動化手段を選択できるようにすることが本稿の狙いです。

項目 Zapier(iPaaS) RPA
対象 SaaS の API 連携(例:Google Workspace ↔ Salesforce) デスクトップ/ブラウザ UI 操作(例:社内基幹システム)
実装方法 ノーコードフロー+限定的なコードステップ ビジュアルレコーディング+スクリプト拡張
保守性 API バージョン変更で Zap が自動的に調整されやすい UI 変更(要素位置・ラベル)でロボットが壊れやすい
スケーラビリティ クラウド上で数千件/分のトランザクション処理が可能【4】 ローカルロボットは同時実行数に制限、サーバーレス化が必要
コスト感覚 月額プラン+タスク数(例:2,000 タスク/月 $20)※公式料金表参照【5】 ライセンス費+ロボット台数・保守費が主
セキュリティ / コンプライアンス データは Zapier のサーバー経由で暗号化(TLS 1.2)※GDPR、CCPA に準拠【6】 社内ネットワーク上で処理されるため、データ流出リスクが低減。内部ポリシーに合わせた認証設定が可能

メリット・デメリット(要点)

  • Zapier のメリット
  • API が整備された SaaS 同士は即時連携でき、インフラ管理不要。
  • コードステップで簡易ロジックを組み込めるため、開発コストが低い。

  • Zapier のデメリット

  • 実行時間・入力サイズに制限があるため、大容量バッチ処理は不向き。
  • 非公開システムやレガシーアプリは対象外。

  • RPA のメリット

  • UI 操作をそのまま自動化でき、既存業務フローの再現が容易。
  • OCR・AI 機能で紙文書デジタル化も支援。

  • RPA のデメリット

  • 画面レイアウト変更に脆弱で、保守コストが増大しやすい。
  • ライセンス費とロボット運用費が継続的に発生する。

ハイブリッド活用シナリオと具体的な業務事例

ここでは Zapier がデータ取得・整形、RPA が社内システムへの入力 を担うハイブリッド構成のパターンを紹介します。両者の強みを組み合わせることで、クラウドとレガシー環境間の壁を埋められます。

シナリオ 1:士業事務所の定型業務自動化

  1. Zapier が顧客メールの添付 Excel を Google Drive に保存し、内容をパース。
  2. パース結果を「Code」ステップで JSON 化し、Slack に通知。
  3. RPA(UiPath) が社内税務申告システムにログインし、JSON データを画面入力。

このフローは M‑core 社の事例として公開されており、手作業で行っていたデータ転記が 80 % 削減 されたと報告されています【7】。

シナリオ 2:社員番号発番プロセスの自動化

  • 新規採用情報が Workday に登録されると、Zapier がトリガーを検知。
  • Python のコードステップで「部署コード+連番」形式の社員番号を生成し、CSV として保存。
  • RPA(Automation Anywhere)が給与計算ソフトにログインし、CSV を読み込んで画面入力。

この構成では ロジックは Zapier が担当UI 入力は RPA が担当 という役割分担が明確になるため、保守対象は「コード変更」+「画面要素更新」の二点に絞れます。


導入判断ポイントとチェックリスト

自社の業務特性・技術リソースを踏まえて、どちらのツールが最適か、あるいは併用すべきかを判断するための項目をまとめました。各項目は 「Zapier が向く」「RPA が向く」 を判定できるよう設計しています。

項目 Zapier が適するケース RPA が適するケース
データ連携の有無 SaaS 間の API 呼び出しが中心 社内レガシーアプリが対象
処理頻度・スケール 毎分〜毎日の大量トリガー 定時バッチや週次作業
社内スキル ノーコード経験者が多数 UI 自動化の経験者が必要
セキュリティ要件 データは外部サーバ経由(暗号化・GDPR 準拠)【6】 完全社内で完結、データ流出リスク低減
保守コスト タスク数増加で料金変動が少ない UI 変更時にロボット修正が必要

注意点と落とし穴

  • Zapier の処理制限:タスク実行時間やデータサイズの上限があるため、バッチ的な大量データ処理は外部サービスへ委託すること。
  • RPA の保守コスト:画面レイアウト変更が頻繁に起きる環境では、ロボットの再構築費用を事前に見積もっておく必要があります。
  • コンプライアンス確認:個人情報や機密データを扱う場合、Zapier のデータ転送が GDPR・CCPA に準拠しているか、または社内で暗号化・アクセス制御が適切に設定されているかを必ず検証してください【6】。

このチェックリストを活用し、「データ連携重視」か「画面操作重視」か を軸に評価すれば、失敗リスクを最小限に抑えた自動化投資が実現できます。


まとめ

  • Zapier は API が公開された SaaS 同士の連携に特化したノーコード iPaaS。軽微なロジックは Code ステップで補完でき、スケーラビリティとクラウド管理が強みです。
  • RPA は UI 操作を自動化し、レガシーアプリや非 API 環境でも対応可能。ただし保守コストが高くなる点に留意が必要です。
  • ハイブリッド構成 により、データ取得は Zapier、画面入力は RPA と役割分担すれば、両者の長所を最大限活かせます。
  • 導入判断は「データ連携 vs 画面操作」「処理頻度」「社内スキル」「セキュリティ要件」の観点で行い、必要に応じて GDPR 等のコンプライアンス確認を実施してください。

参考文献

  1. Zapier Official Documentation – “Supported Apps”. https://zapier.com/apps (2023年閲覧)
  2. Zapier Help Center – “Code step limits”. https://zapier.com/help/code-step/limitations (2024年4月更新)
  3. Gartner, “Magic Quadrant for RPA”, 2023.
  4. Forrester Wave™: iPaaS Solutions, Q1 2024.
  5. Zapier Pricing – https://zapier.com/pricing (2024年6月閲覧)
  6. Zapier Trust & Security – GDPR & CCPA compliance. https://zapier.com/security (2024年3月更新)
  7. M‑core Blog – “Automation case study: Legal office workflow”. https://blog.m-core.jp/automation-case-study (2022年12月掲載)
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