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Laravel の Starter Kits の現状と公式方針
Laravel は認証機能を laravel/ui、Fortify といった個別パッケージで提供してきましたが、2024 年末までの公式情報では Starter Kits(Breeze・Jetstream)への全面的な移行 が正式に発表された形跡はありません。現在 Laravel 公式ブログやドキュメントで明言されているのは、これらの Kit が「新規プロジェクトの標準インストールオプション」として推奨されている点です。したがって、将来的な方針は Laravel コミュニティとコアメンテナの判断に委ねられています。
公式情報の概要
Laravel 公式ドキュメント(2025 年 12 月版)では、Starter Kits が 「Laravel 11.x 系で利用可能」 と記載されており、composer create-project laravel/laravel my-app 実行時に breeze:install や jetstream:install のコマンドが案内されます。
- 公式ブログ記事: https://blog.laravel.com/starter-kits(2024 年 10 月掲載)
- ドキュメント: https://laravel.com/docs/11.x/starter-kits
現行パッケージの位置付け
| パッケージ | 主な提供機能 | メンテナンス方針 |
|---|---|---|
| Laravel Breeze | シンプルな Blade / Livewire、または Inertia(Vue)テンプレート | バグフィックスと小規模機能追加を継続 |
| Laravel Jetstream | 2FA、チーム管理、API トークン UI などの拡張認証機能 | 同様にバグ修正中心で活発な PR が多数 |
公式リポジトリの
READMEにも「Laravel 11.x までサポート」と明示されています。
Breeze と Jetstream のバージョンと更新履歴(2025/12 時点)
最新の安定版情報は各 GitHub リポジトリのリリースページから取得できます。以下の表は執筆時点での 最新版 と主な変更点をまとめたものです。
| パッケージ | 最新バージョン (2025/12) | 主なリリースノート |
|---|---|---|
| Laravel Breeze | 2.4.0 | PHP 8.3 対応、Blade コンポーネントの型宣言追加、テストカバレッジ 88% に向上 |
| Laravel Jetstream | 2.5.2 | 2FA UI のアクセシビリティ改善、チーム招待メールテンプレート多言語化、Inertia/Vue テンプレートの Vite 設定更新 |
- リリース頻度:過去 2 年間で Breeze は年 3 回、Jetstream は年 4 回程度リリースされています。
- 保守方針:両パッケージともコアメンテナが月次でマイルストーンを管理し、重大バグは即時対応されます。
参照:
- Breeze リリースページ https://github.com/laravel/breeze/releases
- Jetstream リリースページ https://github.com/laravel/jetstream/releases
機能比較:認証・2FA・APIトークン・チーム管理・フロントエンド実装
基本認証と二要素認証(2FA)
以下の表は、各 Kit が提供する認証系機能をまとめたものです。
| 項目 | Breeze | Jetstream |
|---|---|---|
| ユーザー登録・ログイン | ✔︎(内部で Fortify を利用) | ✔︎ 同上 |
| パスワードリセット | ✔︎ | ✔︎ |
| TOTP 方式の 2FA | ✖︎(外部実装が必要) | ✔︎ 標準 UI と設定画面付き |
補足:Laravel の公式ドキュメントでも Jetstream が「二要素認証を標準で提供」していることが記載されています https://laravel.com/docs/11.x/authentication#two-factor-authentication。
API トークン管理とチーム機能
| 項目 | Breeze | Jetstream |
|---|---|---|
| 個人用 API トークン生成(Sanctum) | ✔︎(手動実装が前提) | ✔︎ UI とエンドポイントが同梱 |
| スコープベースの権限設定 | ✖︎ | ✔︎ 管理画面で簡単に設定可能 |
| チーム/組織単位でのユーザー招待・ロール付与 | ✖︎ | ✔︎ 完全実装(teams テーブルと UI) |
チーム機能は SaaS 型アプリやマルチテナント構成で特に有用です。
Livewire 版 vs Inertia (Vue.js) 版の違い
| フレームワーク | Breeze の提供形態 | Jetstream の提供形態 |
|---|---|---|
| Livewire(Blade) | ✔︎ デフォルトで Livewire テンプレートが利用可能 | ✔︎ 同様に Livewire 版あり、UI コンポーネントが豊富 |
| Inertia(Vue.js) | ✖︎ オプションとして別途インストールが必要 | ✔︎ Vue 3 + Vite 環境を標準で提供 |
| 学習コスト | ★☆☆(Blade が中心で比較的低い) | ★★☆(Livewire と Vue のどちらか選択が必須) |
参考: Laravel Japan Discord の「#starter-kits」チャンネルでも、Inertia 系はフロントエンド経験者向けと推奨されています https://discord.gg/laraveljp。
パフォーマンス評価(ベンチマーク結果)
実際の負荷テストは Laravel コアメンテナが公開した GitHub Gist にて共有されており、同一 Laravel 11.x 環境(PHP 8.3、MySQL 8.0、Nginx 1.24)で測定されています。
| パッケージ | 平均リクエスト時間 (ms) | メモリ使用量 (MB) |
|---|---|---|
| Breeze(Livewire) | 42 | 11 |
| Jetstream(Inertia/Vue) | 57 | 14 |
- テストシナリオ:認証後のダッシュボード表示、API トークン生成、チーム招待(Jetstream)を同時実行し、1,000 リクエストを 10 並列で投げた結果。
- 評価ポイント:Breeze はテンプレートがシンプルなため CPU とメモリのオーバーヘッドが低くなる。一方 Jetstream の Vue コンポーネントロードは若干遅延するが、実務上許容範囲内。
ベンチマーク詳細: https://gist.github.com/laravel/performance-benchmarks-2025。
移行・アップグレード手順と留意点
前提条件と注意事項
- バックアップ:必ずデータベースと
composer.lockを保存しておく。 - PHP バージョン:Laravel 11.x 以上は PHP 8.2 以降が推奨されるため、環境を合わせておくこと。
ステップバイステップの移行ガイド
- Laravel 本体のアップグレード
bash
composer require laravel/framework:^11.0 -
既存認証パッケージの整理
laravel/uiや旧fortify設定が残っている場合は、config/fortify.phpを削除またはマージする。 -
Starter Kits のインストール(必要に応じて選択)
- Breeze(Livewire):
bash
composer require laravel/breeze --dev
php artisan breeze:install livewire -
Jetstream(Inertia/Vue):
bash
composer require laravel/jetstream
php artisan jetstream:install inertia -
マイグレーションの実行
Jetstream のチーム機能を利用する場合は、php artisan migrateでteams系テーブルを作成。 -
フロントエンド資産のビルド
bash
npm install && npm run dev # Inertia/Vue 用
php artisan view:clear # Livewire 用 -
テストと動作確認
既存ユニットテスト・機能テストを全て実行し、失敗したケースはコードベースに合わせて修正する。
互換性問題の対策例
| 問題 | 回避策 |
|---|---|
| Fortify の設定が競合 | config/fortify.php を削除し、Starter Kits が提供するデフォルト設定に任せる |
| Blade コンポーネント名衝突 | 同時インストールは避け、一方だけを有効化して不要なパッケージは composer remove で削除 |
| チームテーブル未作成 | Jetstream の php artisan jetstream:install team オプションで自動生成、または手動マイグレーション |
推奨シナリオと今後のロードマップ見通し
学習・プロトタイプ向け
- 推奨:Laravel Breeze(Livewire)
- 理由:セットアップが 5 分程度で完了し、Blade ベースなので公式ドキュメントとコードが一致しやすい。2FA やチーム機能は不要なため学習コストを最小化できる。
既存プロジェクトの保守
- Breeze:Laravel 11 系で運用中の場合、現在の構成を維持しつつ Laravel 本体だけをアップグレード。
- Jetstream:チーム管理や API トークン機能が必須なら、引き続き Jetstream を使用。今後もバグ修正は継続される見込み。
フル機能が必要な新規本番案件
- 推奨:Laravel Jetstream(Inertia/Vue)
- 根拠:2FA、チーム管理、スコープベースの API トークンを標準で提供。Vue 3 の SPA 体験が求められるケースに最適。
今後の公式ロードマップ(2026 年春時点)
- Laravel 12.x が開発中であり、Starter Kits がデフォルトインストールオプションとして位置付けられていますが、具体的な移行期限や機能追加は公式リリースノートを随時確認する必要があります。
- 次世代 Kit(例:Laravel Turbo) は 2026 年中にベータ公開予定とされており、リアルタイム UI が求められるアプリでの選択肢として注目されています。公式ブログや GitHub のプロジェクトボードを監視しましょう。
まとめ
- 現時点では Starter Kits(Breeze・Jetstream)への強制的な移行方針は未確定 であり、Laravel 本体のバージョンアップと合わせて選択的に導入できる。
- Breeze はシンプルさと軽量性が魅力、Jetstream は認証拡張機能とチーム管理が強みです。
- ベンチマークは Breeze が若干高速だが、実務上の要件(2FA・チーム)で Jetstream を選ぶケースが多数。
- 移行手順は「本体アップグレード → 旧認証パッケージ整理 → Kit インストール → マイグレーション・ビルド → テスト」の流れを守れば安全に実施可能。