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AMP の料金体系と主要課金要素
Amazon Managed Service for Prometheus(以下 AMP)は、メトリクスの「取り込み」「保存」「クエリ実行」の 3 つに対して従量課金が適用されます。本セクションでは、2026‑06 時点で AWS が公開している公式料金を元に各要素の単価と計算式を整理し、読者が見積もりを作成しやすくなることを目的としています。
参考:AWS 公式料金ページ(閲覧日 2026‑06‑08)[1]
| 課金要素 | 単価 (USD) | 備考 |
|---|---|---|
| メトリクス取り込み | 0.015 USD / 1,000,000 サンプル(USD/1M samples) | 15 秒間隔で取得したサンプル単位 |
| ストレージ利用料 | 0.10 USD / GB‑月 | データ保持期間に応じて従量課金 |
| クエリ実行コスト | 0.01 USD / 1,000 クエリユニット | PromQL の評価回数ベース |
メトリクス取り込み料金
AMP はサンプル単位で課金されます。たとえば 1 ノードあたり 1,000 系のメトリクスを 15 秒ごとにスクレイプした場合、1 ヶ月のサンプル数は次式で求められます。
|
1 2 3 |
サンプル数 = 系統数 × (60 ÷ サンプリング間隔[秒]) × 60 × 24 × 日数 = 1,000 × 4 × 60 × 24 × 30 ≈ 172.8 M |
取り込み費用は 0.015 USD / 1M samples を掛けるだけですので、約 2.59 USD/ノード/月 となります。
ストレージ利用料
保存データ量はサンプルサイズ(平均 16 Byte と仮定)と保持期間から算出できます。上記例で 10 ノードを 30 日間保持した場合の概算は次の通りです。
|
1 2 3 |
総バイト数 = サンプル数 × 10ノード × 16 Byte ≈ 1.728 B × 16 Byte ≈ 27.6 GB |
ストレージ単価 0.10 USD/GB‑月 を適用すると、約 2.76 USD/月 のコストが発生します。
クエリ実行コスト
クエリは「クエリユニット」ベースで課金されます。標準的なダッシュボード閲覧やアラート評価では月間数十万ユニット程度になることが多く、費用は 5 USD〜20 USD の範囲に収まります。
計算式:
取り込み費用 = (サンプル数 ÷ 1,000,000) × 0.015
ストレージ費用 = GB × 0.10
クエリ費用 = (クエリユニット ÷ 1,000) × 0.01
AWS Pricing Calculator を使った実践見積もり:10 ノード Kubernetes クラスター例
この節では、AWS が提供する Pricing Calculator を利用して、具体的なシナリオの見積もり手順を解説します。前提条件と計算ロジックを明示することで、読者が自社環境に合わせてカスタマイズできるようにしています。
前提条件
- クラスター規模:EKS に 10 台の t3.medium ワーカーノード
- メトリクス数:ノードあたり 1,000 系、Pod あたり 200 系(合計約 12,000 series)
- サンプリングレート:15 秒 (4 サンプル/分)
- データ保持期間:30 日
手順
- Calculator にログインし「Create estimate」→「Amazon Managed Service for Prometheus」を選択。
- Metrics ingestion 欄に月間サンプル数を入力します。計算は次式で求めます。
月間サンプル数 = ノード数 × 系統数 × (60 ÷ 15) × 60 × 24 × 30
= 10 × 1,000 × 4 × 60 × 24 × 30 = 1.728 B
入力例:1728000000(単位はサンプル)
- Storage 欄には前項で算出した保存容量(約 27 GB)を入力。
- Query execution では想定クエリユニット数(例:5,000,000)を設定。
見積結果(2026‑06 時点)
| 項目 | 月額 (USD) |
|---|---|
| メトリクス取り込み | 25.92 |
| ストレージ利用料 | 2.76 |
| クエリ実行コスト | 5.00 |
| 合計 | 33.68 |
ポイント:サンプリング間隔や保持期間を変えるだけで、総費用は数倍に上下します。Calculator のシナリオ機能を活用し、複数パターンを比較検証することが重要です。
セルフホスト型 Prometheus(EKS/EC2)とのコスト比較
自前で Prometheus をデプロイした場合にかかるインフラ費と運用工数を概算し、AMP と対比します。ここでは同規模クラスター(10 ノード)をベースに計算しています。
インフラリソース費用概算
| リソース | 構成・数量 | 単価 (USD) | 月額概算 |
|---|---|---|---|
| EC2(t3.medium × 10) | 2 vCPU / 4 GB、オンデマンド | $0.0416/時間[2] | ≈ $300 |
| EBS gp3(100 GB × 10) | $0.08/GB‑月 | — | ≈ $80 |
| ネットワーク転送 (Data out) | 5 TB/月 想定 | $0.009/GB[3] | ≈ $45 |
| 合計インフラ費 | — | — | ≈ $425 |
運用工数・人件費の試算
- 初期セットアップ:2 人日(約 $1,600)
- 月次運用:0.5 FTE(1 名が半分時間)と仮定し、年俸 $120,000 の 20 % → $2,000 / 月
TCO の比較
| 項目 | AMP (月額) | 自前 Prometheus (月額) |
|---|---|---|
| インフラコスト | ≈ $34 | ≈ $425 |
| 運用工数(人件費) | $0(マネージド) | $2,000 |
| スケーラビリティ | 自動スケール・従量課金 | 手動プロビジョニングが必要 |
| 可用性 / SLA | 99.9 % (AWS 管理) | ユーザー責任 |
結論:AMP はインフラ費だけでなく、運用工数の削減効果でも大きなコストメリットがあります。単純にサーバー代金だけを比較すると見えにくいが、TCO では数千ドル規模の差が生まれます。
主要 SaaS 監視サービスとの料金モデル比較
同等のメトリクス量と保持期間(10 ノード・30 日)で代表的な SaaS 監視ツールを試算し、AMP と費用感を比較します。各社公式価格表から計算根拠を引用しています。
| サービス | 料金体系 | 同等ワークロード想定 (10 ノード) | 月額概算 (USD) |
|---|---|---|---|
| Grafana Cloud | プロプランは「Metrics」単位で課金。 例:$49/30 日で 5,000 series + 50 GB 保存 [4] |
12,000 series、保存 30 GB → 2.4 契約必要 | ≈ $118 |
| Datadog | カスタムメトリクスは $0.25/metric/月。 標準メトリクスはホスト単位で $15/host/月 [5] |
10 ホスト + 12,000 カスタム metric | ≈ $3,015 |
| New Relic | データ量従量課金:$0.30/GB‑月(90 日保持)[6] | 約 27 GB のメトリクスデータ(30 日保持) | ≈ $8.10 |
| AMP (本記事) | 前述の 3 要素従量課金 | 同等サンプル・保存期間 | ≈ $34 |
料金構造の違い
- Grafana Cloud は series 数と保存容量で固定プランを選択するため、規模が拡大すると段階的に価格が上がります。
- Datadog はホスト単価+カスタムメトリクス課金のハイブリッドモデルで、数千件以上のカスタム metric があると費用が急増します。
- New Relic はデータ量ベースの従量課金ですが、保存期間が標準で 90 日になるため長期保持時にコストが膨らみやすいです。
ポイント:AMP の「サンプル数 × 0.015」+「GB × 0.10」+「クエリユニット × 0.01」というシンプルな構造は、メトリクス量が増えても単価が一定である点が大きなメリットです。
コスト削減テクニックと導入判断のポイント
AMP の利用費用を抑えるために実践できる手法をまとめました。各施策は必ず Pricing Calculator でシミュレーションし、効果を定量的に確認してください。
サンプリングレートの最適化
15 秒間隔から 30 秒へ変更するとサンプル数が半減し、取り込みコストも 約 50 % 削減 できます。重要度が低いバッチ系サービスはさらに長い間隔(60 秒以上)でも問題ありません。
データ保持期間の調整
標準は 30 日ですが、分析目的で 7 日程度に短縮できるメトリクスは 保存容量を約 80 % カット でき、ストレージ費用が同様に減少します。
クエリユニット削減の工夫
- ローカルキャッシュ:Prometheus の
remote_writeキャッシュや Grafana の「query caching」機能を有効化すると、同一クエリの再実行回数が減ります。 - アラート条件の見直し:絶対値ベースから変化率ベースへ変更することでノイズが抑えられ、不要なクエリ実行を削減(≈ 20 % のユニット削減)できます。
導入判断チェックリスト
- 月間サンプル数 が数十億未満か? → 従量課金で十分に抑えられる。
- 運用リソース に余裕がない、もしくは専門チームが不在か? → マネージドの AMP が TCO を大幅に削減。
- データ保持要件 が 30 日程度で OK か? → ストレージ単価が安い AMP が有利。
- 現行 SaaS(Grafana Cloud / Datadog / New Relic)の見積もりが予算オーバーになる場合、AMP に切替えると 2〜5 倍 のコスト削減が期待できる。
まとめ
- 料金は従量課金:サンプル数・保存容量・クエリユニットの 3 要素で計算でき、公式単価は 0.015 USD / 1M samples、0.10 USD / GB‑月、0.01 USD / 1,000 units(2026‑06 時点)[1]。
- 見積もりは AWS Pricing Calculator が最も正確かつ手軽な方法であり、シナリオごとの比較が容易です。
- 自前構築と比べて TCO が大幅に低減 するだけでなく、運用工数・可用性面でも優位性があります。
- 他社 SaaS と比較してもコスト競争力が高い(Grafana Cloud 約 $118、Datadog 約 $3,000、New Relic 約 $8 に対し AMP は約 $34)[4‑6]。
AMP のシンプルな課金モデルと AWS エコシステムとの親和性を活かし、上記の最適化テクニックと見積もりツールで費用感覚を正確に把握すれば、導入判断が客観的・迅速に行えるでしょう。
参考文献
- AWS Amazon Managed Service for Prometheus – Pricing (2026‑06‑08). https://aws.amazon.com/jp/prometheus/pricing/
- Amazon EC2 On-Demand Pricing – t3.medium (2026‑06‑08). https://aws.amazon.com/ec2/pricing/on-demand/
- AWS Data Transfer Pricing (2026‑06‑08). https://aws.amazon.com/jp/ec2/pricing/on-demand/#Data_Transfer
- Grafana Cloud Pricing (2026‑06‑08). https://grafana.com/products/cloud/pricing/
- Datadog Pricing – Infrastructure & Custom Metrics (2026‑06‑08). https://www.datadoghq.com/pricing/
- New Relic Pricing – Observability Platform (2026‑06‑08). https://newrelic.com/platform/pricing