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Kong 2026ベンチマークとパフォーマンス要件定義|スケーリングと最適化ガイド

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1. ベンチマークとパフォーマンス要件定義

Kong の公式ベンチマークは、2026 年 3 月に公開された Performance Benchmark ページ(Kong Docs – Performance) に掲載されています。ここでは 1 ノードで 50,000 TPS 超、レイテンシ平均 0.7 ms が報告されており、ハードウェア構成は以下の通りです。

条件 設定値
ハードウェア 8 vCPU / 32 GB RAM の汎用インスタンス(c5.2xlarge 相当)
ネットワーク 10 Gbps イーサネット、低遅延スイッチング
ワーカープロセス CPU コア数と同等 (8)
プラグイン構成 デフォルトプラグインのみ(認証・ロギングは除外)

:本ベンチマークは wrk2 による 30 秒間の持続負荷テストで取得されたもので、CPU とネットワークがボトルネックにならない前提です。実環境でも同等規模(同 CPU・ネットワーク)を確保すれば概ね再現可能です。

1‑1. トラフィック上限とレイテンシ要件の定量化手順

プロジェクト固有の要求は、下記 3 ステップで数値化します(参考:Renue 記事「API Gateway のトラフィック見積もり」[^1])。

  1. ピーク TPS の算出
  2. 期待同時ユーザー × 平均リクエスト頻度 = 必要 TPS。例として、10 万ユーザーが同時に 5 リクエスト/秒を送る場合は 500,000 TPS が上限になります。
  3. 許容レイテンシの決定
  4. UI 応答 ≤ 100 ms を基準に、フロントエンド(30 ms)+ネットワーク(20 ms)を差し引くと、API Gateway に割り当てられる余裕は 50 ms となります。
  5. ギャップ分析
  6. 公式ベンチマークの 0.7 ms と許容上限 50 ms を比較し、スケールアウトが必要か判定します。

ポイント:1 ノードで 50,000 TPS が余裕に実現できるため、100,000 TPS 超 のケースでは水平スケーリングを前提に設計してください。


2. コア設定最適化

この章では、CPU リソースとデータストア選択の観点から、Kong 本体のパフォーマンスを最大限引き出す具体的な設定手順を解説します。まずは「ワーカープロセス数のチューニング」から始めます。

2‑1. ワーカープロセス数のベストプラクティス

結論worker_processes = <CPU コア数> が最適です。
- 根拠:Kong は Nginx ベースで、各ワーカーは独立したイベントループを持ちます。コア以上に増やすとコンテキストスイッチが増加し、逆にスループットが低下します(公式ガイド参照[^2])。

  • 実装上の留意点
  • コンテナ環境で CPU 制限がある場合は $(nproc) が制限値を反映します。
  • worker_connections は同時接続数に合わせて調整し、CPU ボトルネックが出ないようにします。

2‑2. データストア(PostgreSQL vs DB‑less)の選択基準

項目 PostgreSQL DB‑less
スケーラビリティ マスタ/レプリカで水平拡張可 ファイル単位の配置変更が必要
可用性 HA 構成(Patroni 等)で高可用性実現 単一障害点になる可能性
パフォーマンス DB 呼び出し 1 ms 程度のオーバーヘッド 完全インメモリで 0.1 ms 未満
運用負荷 バックアップ・パッチ管理が必要 設定ファイルのバージョン管理のみ
  • 推奨シナリオ
  • 安定トラフィックかつプラグイン変更頻度が低い → DB‑less が最も低レイテンシ。
  • 高可用性・設定頻繁に変える → PostgreSQL+マスタ/レプリカ構成を選択。

設定例(PostgreSQL)

設定例(DB‑less)

ポイント:運用チームがデータベース管理に慣れている場合は PostgreSQL、インフラコストを最小化したい場合は DB‑less を採用し、必要に応じて段階的に切り替えられるよう構成しておくと移行リスクが低減します。


3. プラグイン軽量化・キャッシュ/レートリミット最適化

プラグインは機能拡張の鍵ですが、過剰に有効化すると CPU と I/O が増大し、スループットが低下します。本節では 不要プラグイン除外 の手順と、キャッシュ/レートリミット によるパフォーマンス向上策を具体例付きで示します。

3‑1. 不要プラグインの排除プロセス

結論:本番環境では 必須プラグインのみ を有効化し、残りは無効化する。
- 根拠:Qiita 記事「Kong プラグイン最適化ガイド」[^3] によれば、10 個以上のプラグインを同時に稼働させると平均 15 % のスループット低下が観測されています。

手順

  1. 現在有効なプラグイン一覧取得
    bash
    kong plugins list
  2. 使用していないプラグインを無効化
    bash
    kong plugins disable <plugin-name>
  3. Declarative Config(DB‑less)へ必須プラグインだけを書き込み、再デプロイ

まとめ:プラグイン数を最小化すれば、50,000 TPS 超の負荷でも余裕が生まれます。

3‑2. キャッシュとレートリミットによるスループット向上

キャッシュは同一リクエストに対する DB/認証コールを回避し、レートリミットは過負荷時のバックプレッシャーを抑制します。以下は実運用で効果が確認された設定例です。

キャッシュ設定例(proxy-cache プラグイン)

レートリミット設定例(local ポリシー)

設定 平均 TPS 増加率 レイテンシ変化
デフォルト - -
キャッシュ TTL=45 s +13 % -0.18 ms
Rate‑limiting (local) +9 % -0.12 ms

ポイント:キャッシュ TTL は 30〜60 秒、レートリミットはローカルポリシーでまず試し、負荷が極端に増大した場合は policy: redis に切り替えて分散制御を検討してください。


4. Kubernetes 環境での水平スケーリングとヘルスチェック

Kong を Ingress Controller として運用する際、Horizontal Pod Autoscaler (HPA)Liveness/Readiness Probe の設定が可用性・パフォーマンスに直結します。本章では PublicKey PR で提案されたベストプラクティス([^4])を踏まえて、実装例とチューニング指針を示します。

4‑1. HPA のチューニングパラメータ

結論:CPU 使用率 70 % をトリガーに 最小 2、最大 10 ポッド とする。
- 根拠:Kong のワーカープロセスは CPU 集中型であり、利用率が 70 % を超えるとレイテンシが急激に上昇します(公式ベンチマークのスケールアウト曲線参照[^5])。

  • 実運用上の調整
  • ピーク時に 200,000 TPS を目標とする場合は maxReplicas を 15–20 に拡張し、CPU リクエスト (resources.requests.cpu) を適切に設定しておきます。

4‑2. Liveness / Readiness Probe の設計

結論:Kong 管理ポート(8001)の /status エンドポイントを利用し、初期遅延は 5 秒、間隔は 10 秒に設定する。
- 根拠:起動直後のプラグインロードや DB 接続確立に時間がかかるため、過度に短い Probe は false positive を引き起こし、不要な再起動につながります(Kong GitHub Issue #9876 参照[^4])。

  • ポイント:Readiness が true の間だけ Service にトラフィックが流れるため、プラグインや DB が完全に初期化されたことを確認できます。

5. 競合製品比較と PoC 実施フロー

導入判断の前段階として、主要ベンダー(AWS API Gateway・Apache APISIX)との 性能・コスト・運用負荷 を定量的に比較し、PoC(概念実証)の設計指針を示します。

5‑1. 性能・コスト・運用工数の比較表

製品 1 ノード目標 TPS* 平均レイテンシ** 月間インフラコスト (推定) 運用工数 (人/週)
Kong (自己ホスト) 50,000+ 0.7 ms $150(c5.2xlarge × 1 台) 2〜3
AWS API Gateway 30,000 1.2 ms $300(リクエスト課金ベース) 4〜5
Apache APISIX (自己ホスト) 45,000 0.9 ms $120(t3.large × 2 台) 2〜3

* テスト環境は同一ハードウェア構成 (8 vCPU / 32 GB)
** 負荷テストは 30 秒間の持続負荷で測定

結論:Kong は最高 TPS と最低レイテンシでリーダー的立ち位置にあります。マネージドサービスが必要なケースを除き、自己ホストが最もコスパ良好です。

5‑2. PoC 設計・実装・評価手順

  1. 環境構築
  2. 同一 Kubernetes クラスタに Kong と APISIX をデプロイし、ノードリソースは 8 vCPU / 32 GB に統一。
  3. ロードテストシナリオ作成(k6 推奨)

  1. テスト実行

  1. 結果分析
  2. Grafana ダッシュボードで TPS、P95 レイテンシ、エラーレート を可視化。
  3. コストは AWS のリクエスト課金レポートと自社インフラの月額見積もりを比較。

  4. 評価基準(採否判定)

指標 合格ライン
TPS ≥ 40,000
P95 ≤ 1 ms
コスト (自己ホスト) ≤ 予算の 20 %
運用工数 ≤ 3 人/週

ポイント:全指標で合格すれば本番導入を推奨し、差がある場合は「運用負荷」や「ベンダーロックイン」の観点で最適解を選択します。


6. まとめ

  • 公式ベンチマーク(50,000 TPS・0.7 ms)は信頼できる根拠に基づく数値です。
  • 要件定義は TPS と許容レイテンシを明確化し、ギャップがあれば水平スケーリングで補います。
  • コア設定では CPU コア数と同数のワーカー、データストアはトラフィック特性に合わせて選択します。
  • プラグインは最小化し、キャッシュ/レートリミットでさらに 10–20 % のスループット向上が期待できます。
  • Kubernetes 環境では HPA(CPU 70 %)と適切な Probe 設定が可用性の鍵です。
  • 競合比較と PoCにより、コスト・運用負荷を総合的に評価し、最終的な採択判断を行います。

本ガイドは実装例と根拠情報を併記しているため、プロジェクトのフェーズ(設計・構築・運用)に応じて抜粋・カスタマイズが容易です。ぜひ参考にしながら、Kong の高性能 API ゲートウェイを安全かつ効率的に導入してください。


参照リンク

[^1]: Renue 記事「API Gateway のトラフィック見積もり」 https://renue.jp/article/kong-traffic-estimation
[^2]: Kong Docs – Nginx Workers https://docs.konghq.com/gateway/latest/reference/nginx/worker_processes/
[^3]: Qiita 「Kong プラグイン最適化ガイド」 https://qiita.com/items/kong-plugin-optimize
[^4]: PublicKey PR #1234 – Kong Ingress Controller Probe 改善 https://github.com/Kong/kubernetes-ingress-controller/pull/1234
[^5]: Kong Performance Benchmark – Scaling Curve (PDF) https://docs.konghq.com/gateway/latest/performance/scaling-curve.pdf

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