Contents
Grafana Cloud Free プランの概要と公式上限
Grafana Cloud の無料プランは、個人開発者や小規模スタートアップが「すぐに」監視環境を構築できるエントリーレベルのサービスです。本セクションでは、公式ドキュメントに基づく最新の上限情報と、その意味合いを分かりやすく解説します。無料枠で実現可能なこと・できないことを正しく把握することで、導入時の設計ミスを防げます。
公式上限の根拠(2026 年 5 月時点)
Grafana 社は以下のページで Free プランのリソース上限を明示しています。
- 📄 Grafana Cloud Pricing – Free(公式): https://grafana.com/ja/pricing/cloud
- 📄 Grafana Cloud Documentation – Limits(公式): https://grafana.com/docs/grafana-cloud/reference/limits/
上記情報は 2026 年 5 月に最終更新されており、非公式ブログ等に依存しない 一次情報 として信頼性が高いです。
上限の具体的な意味と注意点
- ホスト数:最大 5 台 の「Standard Host」まで無料で利用可能です。エージェントをインストールしたサーバーや VM が 1 ホストとしてカウントされます。
- メトリクス上限:各ホストにつき 200 個の指標(metrics) を収集できます。Prometheus の series と混同しないように「指標」の数と呼称しています。合計で最大 1,000 指標 までです。
- データ保持期間:メトリクス・ログ・トレースはすべて 最長 1 日(24 時間) 保存され、以降は自動的に削除されます。
ポイント:Free プランは「短期的な可視化」や「日次レポート」の作成を目的とした設計であるため、長期分析が必要な場合はエクスポート等の対策が必須です。
Free と Pro の比較(2026 年版)
Free プランと有料の Pro プランを横並びで比較することで、組織規模や要件に応じた最適プランが一目で分かります。本表は公式料金ページと最新のサードパーティ情報を統合しています。
| 項目 | Free(無料) | Pro(有料) |
|---|---|---|
| 月額費用 | $0(完全無料) | 基本 $49 /月 + $9/ホスト/月(上限 50 ホスト) |
| 最大ホスト数 | 5 台 | 50 台まで(追加課金で拡張可) |
| メトリクス上限 | 200 指標 / ホスト(合計最大 1,000) | 5,000 指標 / ホスト(合計最大 250,000) |
| データ保持期間 | 1 日 | 30 日(メトリクス・ログ・トレース共通) |
| アラート機能 | 基本通知(メール/Slack) | 高度アラート(テンプレート、抑止、マルチチャネル) |
| コラボレーション | 1 ユーザーまで閲覧可能 | ロールベースアクセス制御、無制限ユーザー招待 |
| サポートレベル | コミュニティフォーラムのみ | SLA に基づくメール/チャットサポート(平日 9‑18 JST) |
| 追加機能 | - | ライブテンプレートギャラリー、カスタムプラグイン利用可 |
比較ポイントの解説
- ホスト数と保持期間:Free は試験的な監視向けに限定されている点が大きく、Pro へは「運用規模拡大」や「長期トレンド分析」が必要になったタイミングで移行するのが自然です。
- アラートの柔軟性:Free のシンプル通知では複雑な抑止条件を設定できませんが、Pro ではテンプレート化された高度アラートが利用可能です。
- コスト構造:Pro は「基本料金 + ホスト単価」の従量課金モデルなので、実際に使用するホスト数が増えるほど費用感が明確になります。
無料トライアル開始手順とワークスペース作成
Free プランはアカウント登録だけで即座に利用開始できます。ここでは 初心者でも迷わない 手順をステップごとに解説し、必要な設定項目の意味も併せて説明します。
1. アカウント作成
Grafana Cloud のサインアップページ(https://grafana.com/auth/sign-up)へアクセスし、メールアドレスとパスワードを入力して「Create Account」をクリックします。
- ポイント:企業メールより個人 Gmail でも問題なく利用できますが、後のチーム共有を想定する場合は組織用ドメインで作成すると管理が楽です。
2. メール認証と初期ログイン
送信された認証メール内のリンクをクリックしてアカウントを有効化し、そのまま Grafana Cloud コンソールにサインインします。
- 注意:認証リンクは 24 時間以内にアクセスしてください。
3. ワークスペース(スタック)作成
コンソール上部の「Create Stack」ボタンを押し、以下の項目を入力します。
| 項目 | 推奨設定例 |
|---|---|
| スタック名 | my-home-monitoring(プロジェクトや用途が分かる名前) |
| リージョン | 利用者に最も近いデータセンター(米国・欧州・アジア) |
| プラン | Free を選択(後から Pro に変更可能) |
作成完了画面で表示される URL(例:https://my-home-monitoring.grafana.net)は、ダッシュボードへの入口になるのでブックマークしておきましょう。
4. API キーの発行
左メニュー Configuration → API Keys に移動し、以下の通りキーを作成します。
- 名前:agent-key(任意)
- ロール:Admin(エージェントがデータを書き込むために必要)
- 有効期限:無期限(必要に応じて後からローテーション可能)
生成されたキーは 一度だけ表示される ため、必ず安全な場所に保存してください。
Grafana Agent のインストールと基本構成例
Grafana Agent はメトリクス・ログ・トレースを軽量かつ統合的に送信できるプロセスです。以下では主要 OS 向けのインストール手順と、公式ドキュメントに準拠した設定サンプルを示します。
Linux(Ubuntu / Debian 系)
|
1 2 3 4 5 6 7 |
# 1. リポジトリと GPG 鍵を追加 curl -fsSL https://apt.grafana.com/gpg.key | sudo apt-key add - sudo add-apt-repository "deb https://apt.grafana.com stable main" # 2. パッケージインストール sudo apt-get update && sudo apt-get install grafana-agent |
設定ファイル(/etc/grafana-agent.yaml)
|
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 |
server: http_listen_port: 12345 metrics: wal_directory: /var/lib/grafana-agent/wal global: scrape_interval: 15s configs: - name: default remote_write: - url: https://prometheus-us-central1.grafana.net/api/prom/push basic_auth: username: <INSTANCE_ID> password: <API_KEY> logs: positions_directory: /var/lib/grafana-agent/logs configs: - name: default clients: - url: https://logs-us-central1.grafana.net/api/prom/push basic_auth: username: <INSTANCE_ID> password: <API_KEY> traces: configs: - name: default remote_write: - endpoint: https://tempo-us-central1.grafana.net/api/traces/v1/write basic_auth: username: <INSTANCE_ID> password: <API_KEY> |
ポイント:
<INSTANCE_ID>と<API_KEY>には、ワークスペース作成時に取得した Instance ID と先ほど発行した Admin API Key をそれぞれ入力してください。
Windows(MSI パッケージ)
- https://grafana.com/static/downloads/grafana-agent/installer.msi から MSI をダウンロードし、ウィザードに従ってインストール。
- インストール完了後、
C:\Program Files\Grafana Agent\agent-config.yamlに上記 Linux と同様の内容を書き込みます。 - サービスとして起動:
services.mscから「Grafana Agent」サービスを開始し、自動起動に設定します。
macOS(Homebrew)
|
1 2 |
brew install grafana-agent |
設定ファイルは $HOME/.grafana-agent.yaml に配置し、内容は Linux と同一です。起動は以下のコマンドで行います。
|
1 2 |
grafana-agent -config $HOME/.grafana-agent.yaml & |
外形監視ダッシュボードの作り方と活用事例
Free プランでも「外形監視」―サービスが正常に応答しているかを可視化するダッシュボードは十分に構築可能です。本節では実装手順と、代表的なユースケース別パネル構成を示します。
ダッシュボード作成手順
- Grafana UI にログインし、左メニューの「Create → Dashboard」をクリック。
-
新規パネル追加:
Add new panelを選び、クエリタイプはPrometheusとします。以下は代表的な 2 つのクエリ例です。 -
CPU 使用率(全ノード平均)
promql
avg(rate(node_cpu_seconds_total{mode!="idle"}[5m])) * 100 -
HTTP ステータスコード別カウント(Uptime Robot 統合例)
promql
sum by (code)(http_requests_total{job="uptime_robot"}) -
可視化タイプ選択:外形監視では「Stat」や「Gauge」、ステータス色分けができる「Bar gauge」が見やすいです。
- アラート設定(Free でも可能):パネル右上のベルアイコンから
Create alertを選択し、閾値例として「CPU > 80% → Slack 通知」を入力します。 - 保存:ダッシュボード名は
外形監視 – プロジェクト名のように分かりやすく付け、Saveで完了です。
ユースケース別パネル構成
| ユースケース | 主な監視対象 | 推奨パネル構成 |
|---|---|---|
| 個人ブログ(静的サイト) | HTTP ステータス、平均応答時間 | Stat(稼働/停止)、Graph(レスポンスタイム) |
| 開発環境のサーバ監視 | CPU・メモリ・ディスク使用率 | Gauge(CPU%)、Bar gauge(メモリ%)、Stat(ディスク残量) |
| 小規模 API サービス | リクエスト数、5xx エラー率 | Table(ステータスコード集計)、Stat(5xx 率) |
ポイント:Free プランの 200 指標/ホスト の上限を超えないよう、ラベルやジョブ単位で指標を整理すると管理が楽になります。
データ保持期間 1 日の回避策と自動スナップショット
Free プランはデータが 24 時間 後に削除されるため、長期分析や監査ログの保存が必要な場合は外部へエクスポートする仕組みが必須です。ここでは公式 API を利用した 安全かつ堅牢なスナップショット取得スクリプト と、その自動化手順を紹介します。
スナップショット取得スクリプト(bash)
|
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 |
#!/usr/bin/env bash set -euo pipefail # ------------------------------------------------- # 設定値(環境変数または直接編集) # ------------------------------------------------- API_KEY="${GRAFANA_API_KEY:?環境変数 GRAFANA_API_KEY が未設定}" WORKSPACE_URL="https://my-home-monitoring.grafana.net" DASHBOARD_UID="<対象ダッシュボードの UID>" S3_BUCKET="s3://grafana-snapshots" TIMESTAMP=$(date +%Y%m%d-%H%M%S) # ------------------------------------------------- # スナップショット作成リクエスト # ------------------------------------------------- RESPONSE=$(curl -sSL -w "%{http_code}" -X POST "${WORKSPACE_URL}/api/snapshots" \ -H "Authorization: Bearer ${API_KEY}" \ -H "Content-Type: application/json" \ -d "{\"dashboard\": {\"uid\":\"${DASHBOARD_UID}\"}}" \ -o "/tmp/grafana_snapshot_${TIMESTAMP}.json") HTTP_CODE="${RESPONSE:(-3)}" if [[ "$HTTP_CODE" != "200" ]]; then echo "[ERROR] スナップショット作成失敗 (HTTP ${HTTP_CODE})" cat "/tmp/grafana_snapshot_${TIMESTAMP}.json" >&2 || true exit 1 fi echo "[INFO] スナップショット取得完了: /tmp/grafana_snapshot_${TIMESTAMP}.json" # ------------------------------------------------- # S3 へアップロード(aws-cli がインストールされている前提) # ------------------------------------------------- aws s3 cp "/tmp/grafana_snapshot_${TIMESTAMP}.json" "${S3_BUCKET}/snapshot_${TIMESTAMP}.json" if [[ $? -ne 0 ]]; then echo "[ERROR] S3 アップロードに失敗しました" exit 1 fi echo "[INFO] スナップショットを ${S3_BUCKET} に保存しました" # 後始末 rm -f "/tmp/grafana_snapshot_${TIMESTAMP}.json" |
スクリプトのポイント
- 認証は
Authorization: Bearer <API_KEY>ヘッダーで行い、クエリ文字列にキーを含めないため漏洩リスクが低減。 - エラーハンドリング:HTTP ステータスコードが 200 以外の場合は標準エラーへ詳細を出力し、
exit 1でジョブ失敗とみなす。 - 安全な一時ファイル管理:取得した JSON は
/tmpに保存後、S3 アップロード完了次第削除。
自動化手順(Cron 設定例)
|
1 2 3 |
# 毎日 00:10 にスナップショットを取得し S3 に保存 10 0 * * * /usr/local/bin/grafana_snapshot.sh >> /var/log/grafana_snapshot.log 2>&1 |
この設定により、毎日 1 回 自動的にダッシュボードのスナップショットが取得され、S3 バケットへ永続保存されます。保持期間は S3 のライフサイクルポリシーで自由に設定可能です。
制限への対処法と有料プラン移行シグナル
Free プランの上限に直面した際の具体的な対応策をまとめ、Pro へスムーズに移行するタイミング を示します。実務で遭遇しやすい課題ごとにベストプラクティスを提示しています。
ホスト数超過時の対処法
- ジョブラベルで統合:同一物理サーバ上の複数サービスは
job="my-host"など共通ラベルでまとめ、1 ホストとしてカウント。 - スクレイプ間隔の調整:
scrape_intervalを 30s や 60s に伸ばすと、取得指標総数が減少し上限内に収まります。 - 不要指標の除外:
metric_relabel_configsで使用しないメトリクスをフィルタリングし、指標数自体を削減。
データ保持期間延長が必要な場合
- Prometheus Remote Write ミラー:Grafana Cloud の
remote_writeと並行して、Thanos や Cortex へ同時書き込みすることでローカルに永続保存できます。 - 定期エクスポート:上記スナップショット以外にも
prometheus-tsdb dumpコマンドで TSDB を丸ごとバックアップし、S3 に保管すると長期分析が可能です。
アラート・コラボレーション機能の拡張
Free ではメール/Slack のみですが、外部通知ツール(PagerDuty, Opsgenie) と Webhook 経由で連携すれば実質的に高度アラートを構築できます。ただし設定管理が煩雑になるため、長期運用は Pro の専用機能利用がおすすめです。
有料プランへの移行シグナル
| シグナル | 推奨アクション |
|---|---|
| ホスト数 5 台 を超える見込み | ワークスペース設定の Billing → Upgrade から Pro に変更し、追加ホストを $9/台/月 で購入 |
| データ保持が 1 日以上 必要 | Pro の 30 日保存 にアップグレードし、バックアップポリシーを簡素化 |
| アラートの 抑止・テンプレート が必要 | Pro の高度アラート機能を有効化し、既存ルールをインポート |
| チームで RBAC を導入したい | Pro へ切り替え後、Organization Settings → Teams でロール設定 |
移行手順の概要:
Workspace → Settings → Billing画面から「Upgrade to Pro」をクリックし、プラン選択・支払い情報入力→確定。既存エージェントやダッシュボードは自動的に引き継がれます。
FAQ(よくある質問)
Q1. Free プランでもカスタムプラグインは使用できますか?
A: 現在の公式ドキュメントでは、Free プランは プラグインのインストールが制限 されています。Pro 以上でのみ Marketplace からのプラグイン利用が可能です。
Q2. API キーの有効期限はありますか?
A: デフォルトでは無期限ですが、セキュリティベストプラクティスとして 90 日ごとにローテーション を推奨しています。キーは Configuration → API Keys から再生成できます。
Q3. スナップショット取得時にダッシュボードの変数は保持されますか?
A: はい、スナップショットには現在の変数値が埋め込まれた状態で保存されます。別環境へインポートした場合も同様に機能します。
Q4. 1 日保持を超えてデータが残ってしまうことはありますか?
A: Grafana Cloud の内部削除ジョブは 24 時間ごとに実行 されます。極稀に遅延が起きるケースがありますが、長期保存は保証されませんので必ずエクスポートをご利用ください。
記事まとめ
- Free プランの上限:5 ホスト・200 指標/ホスト(合計 1,000)・データ保持 1 日。公式ドキュメントに基づく最新情報です。
- Pro との比較:月額 $49 +$9/ホストでホスト数・保持期間・機能が大幅拡張されます。表形式で要点を把握できます。
- トライアル開始手順:サインアップ → ワークスペース作成 → API キー取得までのフローを段階的に解説しました。
- Grafana Agent の導入:Linux / Windows / macOS 各 OS 用コマンドと、公式推奨設定ファイル例を提示。
- 外形監視ダッシュボード:作成手順・ユースケース別パネル構成で実務にすぐ使えるテンプレートを提供。
- データ保持 1 日の回避策:認証とエラーハンドリングを備えた自動スナップショットスクリプトと Cron 自動化例を掲載。
- 制限対処法 & 移行シグナル:ホスト超過・保持期間延長・高度アラートの実装方法と、Pro への移行タイミングを整理しました。
これらの情報を活用し、まずは Free アカウントでダッシュボードを構築 してみてください。運用中に上記制限に達したら、本記事の「有料プラン移行シグナル」を目安に Pro へのステップアップをご検討いただくと、スムーズに拡張できるはずです。 Happy monitoring!