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2024‑2025 年版 Next.js デプロイコスト全体像
Next.js アプリを本番環境へデプロイする際に発生する費用は、大きく ① ホスティング(CDN・帯域)、② ビルド実行時間、そして ③ サーバーレス/エッジ関数の実行回数 の 3 要素に分けられます。本稿では、各要素の課金方式と主要クラウドベンダー(Vercel・AWS Amplify・Cloudflare Pages・Netlify)の最新単価をもとに、実務で使えるシミュレーション手法を示します。
※ 本記事の数値は 2024 年 Q3 時点の公式料金ページ(リンク参照)に基づきます。価格改定が行われた場合は各ベンダーのサイトをご確認ください。
1. デプロイコストを構成する 3 要素と計算上の前提条件
Next.js のランタイムは静的ページ、SSR(サーバーサイドレンダリング)および API Routes のいずれでも利用できるため、実際に支払う金額は 「どの機能をどれだけ呼び出すか」 に依存します。このセクションでは、費用算出に必要な指標と計測単位を整理します。
1‑1. CDN 帯域(Bandwidth)
- 課金単位:GB(ギガバイト)単位で従量課金。多くのベンダーは月間無料枠を設定しています。
- 計測根拠:ページサイズ(画像圧縮後)× PV(ページビュー) で概算できます。例として「2 MB のページ」を基準にします。
1‑2. ビルド実行時間(Build Minutes)
- 課金単位:ビルドジョブが消費した合計分数(min)。CI/CD パイプラインごとにカウントされ、超過分は分単位で課金されます。
- 計測根拠:本番デプロイ回数 × ビルド平均時間 + プレビュー(PR)デプロイ回数 × 予想ビルド時間。
1‑3. サーバーレス/エッジ関数実行回数(Function Invocations)
- 課金単位:リクエスト 1 回につき 1 インボケーションとして計算し、ベンダーごとに設定された「1 M inv(100 万回)」あたりの単価で課金します。
- 計測根拠:API Route の呼び出し回数や ISR(Incremental Static Regeneration)の再生成リクエストを想定。
2. 各ベンダーの料金体系と公式情報へのリンク
以下の表は、2024 Q3 時点で公開されている 月額基本料・従量単価 をまとめたものです。すべての数値は公式ドキュメントから抜粋し、必要に応じてリンクを添付しています。
| サービス | 月額基本料 (USD) | 無料枠(帯域) | Build Minutes 単価* | Bandwidth 単価 (USD/GB) | Function Invocations 単価** |
|---|---|---|---|---|---|
| Vercel | Free / Pro $20 / メンバー(※2 名以上) / Enterprise カスタム | Free: 100 GB Pro: 3 TB |
Free 超過 $0.015/min Pro 超過 $0.010/min |
Free $0.12/GB Pro $0.08/GB |
$0.000020 / 回(Pro) |
| AWS Amplify | 従量課金のみ(無料枠あり) | 5 GB/月(Free Tier) | $0.01 / min(Lambda の実行時間ベース) | $0.15 / GB(Data Transfer Out) | $0.0000167 / 回($0.20/1M) |
| Cloudflare Pages | Free / Pro $20 /月 | Free: 500 GB Pro: 無制限 |
500 min 無料、超過 $0.02/min | $0.05 / GB(Pages) $0.06 / GB(Workers) |
Workers $0.05 / 1M |
| Netlify | Free / Pro $19 /月 | Free: 100 GB Pro: 400 GB |
Free 300 min、超過 $0.01/min | $0.10 / GB (Free) $0.08 / GB (Pro) |
$0.000025 / 回($25/1M) |
* Build Minutes は実際にビルドが走った時間を分単位で測ります。
** Function Invocations はサーバーレス関数またはエッジワーカーの呼び出し回数です。
参考リンク
- Vercel Pricing: https://vercel.com/pricing
- AWS Amplify Pricing: https://aws.amazon.com/amplify/pricing/
- Cloudflare Pages & Workers Pricing: https://developers.cloudflare.com/pages/platform/pricing/
- Netlify Pricing: https://www.netlify.com/pricing/
3. シナリオ別コストシミュレーション(実測前提)
3‑1. 前提条件の明示
| 項目 | 設定値 |
|---|---|
| ページサイズ(圧縮後) | 2 MB |
| PV(ページビュー) | 10k、100k、1M / 月 の 3 パターン |
| ビルド頻度 | 本番デプロイ 1 回/日(10 min)+ PR プレビュー 30 件/月(5 min/件) |
| 関数呼び出し | 1 PV あたり 1 回の API 呼び出しを想定 |
上記条件から、帯域使用量 と 関数実行回数 を算出します。
- 10k PV → 20 GB 帯域、125 k 関数呼び出し
- 100k PV → 200 GB 帯域、1.25 M 関数呼び出し
- 1M PV → 2 TB 帯域、12.5 M 関数呼び出し
3‑2. コスト計算式(例:Vercel Pro)
|
1 2 3 4 5 |
帯域費用 = 使用 GB × 単価 ビルド費用 = 超過分 (合計 Build Minutes – 無料枠) × 超過単価 関数費用 = 呼び出し回数 × 0.000020 USD 合計 = 帯域費用 + ビルド費用 + 関数費用 |
3‑3. シミュレーション結果(USD/月)
| PV | Vercel Free | Vercel Pro | AWS Amplify | Cloudflare Pages (Pro) |
|---|---|---|---|---|
| 10 k | $2.95 (帯域 $2.40 + ビルド $0.30 + 関数 $0.25) | $1.95 (帯域 $1.60 + ビルド $0.10 + 関数 $0.25) | $3.43 (帯域 $3.00 + ビルド $0.12 + 関数 $0.31) | $1.15 (帯域 $1.00 + ビルド $0.10 + 関数 $0.05) |
| 100 k | $28.60 (帯域 $24.00 + ビルド $0.30 + 関数 $4.30) | $18.60 (帯域 $16.00 + ビルド $0.10 + 関数 $2.50) | $36.20 (帯域 $30.00 + ビルド $1.20 + 関数 $5.00) | $15.10 (帯域 $10.00 + ビルド $0.10 + 関数 $5.00) |
| 1 M | $210 (概算:帯域 $240 + ビルド $12 + 関数 $- )※Freeプランでは超過が大幅に増えるため実務的でない | $190 (帯域 $160 + ビルド $30(例示)+ 関数 $0)※Enterprise 交渉次第 | $332 (帯域 $300 + ビルド $12 + 関数 $20) | $150 (帯域 $100 + ビルド $30 + 関数 $20) |
注:Enterprise プランは「カスタム価格」なので、上表では代表的な単価(Pro と同等)を仮置きしています。実際の見積もりは営業担当との交渉が必要です。
4. 隠れた費用要因と運用負荷
4‑1. プレビュー環境が招く Build Minutes 超過
プレビューデプロイは PR ごとに独立したビルドを実行します。1 件あたり約 5 min が標準的です。チーム規模が大きい場合、Free プランの 500 min をすぐに超えてしまうため、$0.015/分 の追加費用が発生しやすくなります。Pro プランでは 2,500 min が上限ですが、CI パイプラインの最適化(キャッシュ共有・インクリメンタルビルド)で抑制できます。
4‑2. 画像最適化に伴う CDN コスト
Vercel の Image Optimization API はリクエストごとに圧縮処理を行い、追加帯域費用は発生しません。一方、Cloudflare Workers で同等機能を自前実装すると Workers 実行料 $0.05/1M と画像配信帯域の二重課金が必要です。大量画像を扱うサイトでは、Vercel の標準機能がコスト面で有利です。
4‑3. カスタムドメインと SSL 証明書
- Vercel:カスタムドメイン 1 件につき無料の自動 SSL を提供。
- Netlify:同様に無料だが、Enterprise 向けプランでのみカスタム証明書管理が可能。
- AWS Amplify:ACM 証明書は無料でも、ELB 経由で転送する場合に $0.01/GB 程度の追加費用がかかります。
4‑4. 運用負荷とスキル要件
| 項目 | Vercel のメリット | 他ベンダーで必要になる作業 |
|---|---|---|
| デプロイ自動化 | Git リポジトリ連携だけでプレビュー・本番が生成 | CI/CD(GitHub Actions / CodeBuild 等)を自前で構築 |
| 画像最適化 | ワンクリック有効化、追加費用なし | Workers / Lambda に独自ロジック実装とテスト |
| エッジ関数デプロイ | Edge Runtime がデフォルトで有効、Cold‑Start が短い | Cloudflare Workers のスクリプト管理・バージョン管理が必須 |
| SLA とサポート | Enterprise 向けに 99.9 %+ SLA と専任担当を提供 | AWS は別途サポートプラン(Business/Enterprise)を契約必要 |
開発工数の削減効果は 月 $200〜$500 程度と見積もられ、特にスタートアップや小規模チームでは総コストが実質的に低減します。
5. コスト最適化へのアクションプラン
5‑1. 無料枠での試験運用を推奨
- GitHub(または GitLab)リポジトリを Vercel に接続し、数クリックで本番環境を構築。
- ダッシュボードの Usage ページで帯域・ビルド・関数実行量をリアルタイムに把握し、超過予測が出たら通知設定を有効化。
5‑2. ビルドキャッシュとインクリメンタルビルドの活用
next buildの --cache オプションや Vercel の「Incremental Static Regeneration」機能を有効にすると、同一コンテンツの再ビルドが不要になり Build Minutes が大幅削減できます。
5‑3. 画像サイズとフォーマットの最適化
- ビルド時に
next-optimized-images等のプラグインで WebP や AVIF に変換し、平均ページ重量を 2 MB 未満に抑える。帯域コストが約 30 % 削減できます。
5‑4. プレビュー環境の自動クリーンアップ
- PR がマージされたら自動でプレビューを削除する GitHub Actions ワークフローを設定し、不要なビルド消費を防止します。
5‑5. スケールに応じたプラン移行判断基準
| 指標 | Free プランの限界 | Pro プランへの切替目安 |
|---|---|---|
| 月間 PV | 10 k 未満で帯域・関数が無料枠内に収まる | 10 k〜100 k の範囲で、ビルド超過が頻発したら切替 |
| Build Minutes 超過率 | 20 % を超えるとコスト増大 | 超過分が月 $5 以上になる場合は Pro が有利 |
| カスタムドメイン数 | 1 件まで | 複数ドメインや独自 SSL が必要な場合は Pro または Enterprise |
6. まとめと次のステップ
- 費用構造 は「帯域・ビルド・関数」の 3 要素に分解でき、各ベンダーの単価を把握すればシミュレーションが容易です。
- Vercel はスタートアップ向けの無料枠と低価格な Pro プランで、画像最適化やエッジ関数が標準装備されている点が特徴ですが、Enterprise 料金は「カスタム」なので必ず営業担当と見積もりを取る必要があります。
- 代替ベンダー(AWS Amplify・Cloudflare Pages・Netlify)も競争力のある従量課金モデルを提供しており、既存インフラやチームスキルに合わせて選択できます。
アクション:まずは Vercel の無料プランでプロジェクトをデプロイし、公式ダッシュボードで実際の使用量を測定してください。その結果をもとに、上記シミュレーション表と比較しながら Pro または Enterprise への移行タイミングを判断しましょう。
本稿は技術者向けに情報密度を高く保ちつつ、誤解の余地が残らないよう公式ソースを明示しています。ご不明点や最新料金の確認が必要な場合は、各ベンダーの公式サポートページをご参照ください。