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MT103 と MT202 の違いと活用法 – 国際送金メッセージ徹底解説

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MT103 と MT202 の概要と利用シーン

国際送金で頻繁に目にする MT103MT202 は、目的が根本的に異なるメッセージです。本節では「どちらのメッセージが自社の業務フローに適合するか」を判断できるよう、基本概念と利用シーンを整理します。

MT103:顧客単位の送金指示

MT103 は 顧客(個人・法人)から銀行への 1 件単位の送金依頼 を表す電文です。SWIFT の FIN メッセージ仕様書(User Handbook, 第 9 版)では、送金人情報・受取人口座情報を必ず含めることが義務付けられています【1】。したがって、給与振込や個人間送金など「顧客主導」の決済に適しています。

MT202:金融機関間の資金移動(インターバンク決済)

MT202 は 銀行同士が純粋な資金清算を行う際に使用 されます。顧客情報は含まれず、取引リファレンスや金額、送受信金融機関の BIC が中心です(必須タグは 20, 21, 32A に加えてオプションで 53‑54 系列が使用されることが多い)【2】。インターバンク清算や MT103 の内部転送に利用されます。


メッセージ構造と主要フィールドの比較

この章では、実務で目にするタグの違いを表形式で示し、各項目が何を意味するかを簡潔にまとめます。まずは全体像を把握したうえで、後述のサンプル電文と照らし合わせてください。

主要タグ比較(MT103 ↔ MT202)

以下の表は、SWIFT 標準(FIN User Handbook, §5.1‑5.2)に基づく必須・任意フィールドをまとめたものです。

タグ MT103 の意味・必須性 MT202 の意味・必須性
20 取引リファレンス(必須) 取引リファレンス(必須)
21 参照番号(任意) 関連取引リファレンス(必須)
32A 日付・通貨・金額(必須) 決済金額と日付(必須)
50K / 50F 送金人詳細(必須) 記載なし
59 受取人口座情報(必須) 記載なし
53A‑B‑D 発信金融機関(任意) 発信金融機関 BIC(推奨)
54A‑B‑D 受取金融機関(任意) 受取金融機関 BIC(推奨)
71A 手数料負担指示(任意) 記載なし(銀行間手数料は別途合意)

注記:実務では MT202 にも 53‑54 系列や 56‑57 系列を付加し、送金経路の可視化を行うケースが一般的です【2】。

電文サンプル(抜粋)

MT103(顧客単位送金)

ポイント:顧客情報(50K・59)と手数料指示(71A)が必ず含まれます。

MT202(銀行間資金移動)

ポイント:顧客情報は省かれ、取引リファレンス(20, 21)と金額(32A)、送受信金融機関の BIC が中心です。


業務フロー別のメッセージ選択指針

ここでは「顧客発信型」と「金融機関間直接決済」の二つの代表的フローを示し、各段階で必要となるチェックポイントをまとめます。

1. 顧客発信型フロー(MT103 が主流)

  • 概要:顧客が自社口座から指示 → 発信銀行 → SWIFT ネットワーク → 受取銀行。
  • 重要ポイント
  • 送金人・受取人情報の正確性(50K, 59)。
  • 手数料負担指示(71A)により顧客へのコスト提示が可能。
  • AML スクリーニングは送金人と受取人双方で実施。

2. 金融機関間直接決済フロー(MT202 が適用)

  • 概要:一方の銀行が保有する資金を、別行へ即時に移動。MT103 の結果として残った余剰資金や、流動性供給・インターバンク清算で利用。
  • 重要ポイント
  • 関連取引リファレンス(21)で元の MT103 と紐付けることが推奨されます。
  • 銀行コード(BIC)の有効性と制裁対象外かを確認(SWIFT Sanctions Screening)。
  • 金額情報は必須(32A)だが、顧客属性は不要。

ユースケース別メッセージ選択表

ユースケース 推奨メッセージ 主な根拠
給与・個人送金 MT103 顧客情報必須、手数料指示が可能
輸入代金支払(L/C) MT103 + 後続 MT202 商品代金は顧客情報付きで送信、清算はインターバンクで実施
インターバンク流動性供給 MT202 顧客情報不要、銀行間の資金移転に特化

手数料体系とコンプライアンス留意点

手数料構造の違い

  • MT103:タグ 71A により「OUR/SHA/BEN」の手数料負担指示が可能。送金者側で全額負担(OUR)すれば、受取人は追加費用を支払わずに済みます。
  • MT202:手数料は銀行間の合意内容として別途契約されることが多く、電文上では表現しません(実務では 56‑57 系列で手数料情報を付加するケースがあります)【3】。

AML/制裁チェックの違い

項目 MT103 の対象 MT202 の対象
顧客属性 送金人(50K)・受取人(59)の姓名、住所、国籍等 発信金融機関・受取金融機関の BIC の制裁リスト照合
金額閾値 高額取引は追加審査が必要 金額自体は AML スクリーニング対象外だが、相手銀行が制裁対象かは必須チェック

実務ヒント:システム設計時に MT103 用の顧客情報取得フローと、MT202 用の金融機関コード検証ロジックを分離すると、保守性が向上します。


ISO 20022 への移行と実務チェックリスト

SWIFT は 2025 年末までに FIN メッセージから ISO 20022(例:PACS.008)へ段階的に移行 する計画を公表しています【4】。ISO 20022 は構造化データと豊富なメタ情報が特徴で、コンプライアンス・レポーティングの自動化が期待されます。

移行概要と MT202 の将来像

  • MT103 → PACS.008:主要項目は「GrpHdr」や「CdtTrfTxInf」にマッピングされ、タグ 50K/59 はそれぞれ「Dbtr」「Cdtr」要素へ変換。
  • MT202 の代替メッセージ:現在のところ SWIFT は FIToFICustomerDirectDebit(pacs.009)や FIToFIPaymentStatusReport(camt.029) を候補として検討中ですが、正式な仕様は未確定です【5】。したがって、現行 MT202 の運用を継続しつつ、将来の置換計画を策定することが推奨されます。

実務向け比較表(MT 系列 ↔ ISO 20022)

項目 現行 MT103 ISO 20022 PACS.008 現行 MT202 ISO 20022 予測メッセージ
メッセージコード 103 pacs.008.001.02 202 未定(pacs.009/ camt.029 等)
顧客情報 タグ 50K・59 Dbtr / Cdtr 要素 - 同様に要素化(必要に応じて)
手数料指示 タグ 71A ChrgBr 要素 - 別途付帯情報として扱う可能性
金額・通貨 タグ 32A Amt / Ccy 属性 タグ 32A 同様に構造化

移行時チェックリスト(抜粋)

MT103/PACS.008 用

  • ☐ 取引リファレンス(20)が一意であることを確認。
  • ☐ 手数料負担指示(71A)の内容が ISO 20022 の ChrgBr 要素へ正しくマッピングできるか。
  • ☐ 顧客情報(50K・59)を構造化データ(PartyIdentification)に変換する設計が完了しているか。

MT202/将来メッセージ用

  • ☐ 関連リファレンス(21)が元の MT103 と正しくリンクできているか。
  • ☐ 発信・受取金融機関 BIC が有効で、制裁リストに未掲載であることを確認。
  • ☐ ISO 20022 への置換シナリオ(例:pacs.009)について、影響範囲とスケジュールを策定済みか。

ポイント:上記チェックリストを社内のシステム改修・運用マニュアルに組み込むことで、ISO 20022 移行時の抜け漏れリスクを大幅に低減できます。


参考文献(出典)

  1. SWIFT FIN User Handbook – 第 9 版(2023). https://www.swift.com/standards
  2. MT202 Message Specification, SWIFT (2022). https://www.swift.com/standards/message-types/mt202
  3. SWIFT Customer Security Programme – 手数料取扱い指針(2021).
  4. SWIFT ISO 20022 Migration Roadmap, SWIFT (2024). https://www.swift.com/iso20022
  5. ISO 20022 Business Process Specification – Financial Institution to Financial Institution Customer Direct Debit(2023).

本稿は実務での活用を前提に、最新の SWIFT 標準と ISO 20022 の公表情報に基づいて作成しています。今後の仕様変更や各金融機関の独自要件については、都度公式ドキュメントをご確認ください。

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