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RealityScanで始めるQuick Start(撮影→STLチェックリスト)
短時間で結果を確認するための最短手順と印刷前チェックリストを示します。まずRealityScanで仮モデルを作り、Blenderでスケールとウォータタイト化を行い、スライサでテストプリントします。
撮影前チェックリスト
撮影に入る前の主要確認事項です。ここを満たすと初期失敗が減ります。
- 撮影環境:拡散照明があるか。硬い影が出ないか確認します。
- 表面処理:反射面は偏光フィルタや一時的なマット化で対処します。
- カメラ設定:露出とホワイトバランスを固定します。デジタルズームは使いません。
- 固定具:三脚、回転台、リモートシャッターを用意します。
- スケール参照:定規やコインを1枚撮影に含めます。
- 権利確認:被写体の著作権・肖像権を確認します。商用利用は別途許諾が必要です。
プリント前チェックリスト(STL準備)
STLに出力してスライサに渡す前に最低限確認する項目です。
- スケール:既知寸法と合うか確認します。
- 非マニフォールド:穴や開口がないか点検します。
- 法線:法線が外向きで統一されているか確認します。
- ウォータタイト化:閉じた体積になっているか確認します。
- 壁厚:使用するプリント方式とノズル径に応じ十分な厚みがあるか確認します。
- 中空化(SLA):必要ならドレイン穴を設計しているか確認します。
RealityScanの操作手順とエクスポート(フォトグラメトリ→STL化)
RealityScanの一般的な操作フローと出力方法を具体的に示します。アプリUIや出力形式はバージョンで変わるため、以下は一般例とBlenderでのSTL化手順を含みます。
バージョン確認と基本UI
アプリのバージョンと設定名は更新で変わります。必ずアプリ内の設定画面(歯車アイコン等)でバージョン情報を確認してください。
一般的な流れは次の通りです。プロジェクト作成 → 写真追加 → モデル生成(Build/Process)→ プレビュー → エクスポートです。UIの表記は「Add Photos」「Build」「Export」などに相当します。
処理品質とワークフローの例
初回は低品質設定で素早く試作し、欠損箇所やスケールズレを確認します。問題がなければ高品質で最終生成します。設定名は「Quality」「Detail」「Resolution」などが使われることが多いので、用途に合わせて選択してください。
RealityScanからSTL化する手順(実務例)
RealityScanで直接STLが出ない場合の一般的な変換手順です。OBJ/GLTFでエクスポートしてからSTLに変換します。
- RealityScanでモデル生成後、エクスポートを選びます。多くのバージョンはOBJ/GLTF/PLY形式をサポートします。
- テクスチャが不要ならジオメトリのみの形式で出力します。STLが無ければOBJ/GLTFで保存します。
- PCでBlenderを起動し、File > Import でOBJまたはglTFを読み込みます。
- Blender上で単位(Metric / mm)を確認し、既知寸法でスケールを合わせます。既知寸法があればそれを基準にリスケールします。
- メッシュ修正(非マニフォールド検出、法線再計算、穴埋め、厚み付与)を行います。
- File > Export > Stl (.stl) を選び、必要なら「Selection Only」を有効にして書き出します。
注意:RealityScanのエクスポート項目名や保存先はバージョン差があるため、アプリ内のヘルプ・リリースノートを参照してください。
撮影の実践テクニック(フォトグラメトリ)
撮影品質が最終モデルの精度を左右します。ここでは実務で使える撮影指針を示します。
撮影枚数とオーバーラップ
被写体の大きさと複雑さで必要枚数は変わります。一般的な目安と考え方を示します。
- 小物(テクスチャ豊富、単純形状):40–120枚を目安にします。
- 複雑・大形状:100–300枚を目安に増やします。
- オーバーラップ:隣接写真の重複は60–80%を目安に撮影します。
- 備考:これらはカメラ性能や被写体によって変動します。まず少数で仮処理し、必要に応じて追加撮影してください。
照明・反射対策
反射と影がモデル化を壊します。照明の作り方と対処法です。
- 拡散照明を使い、硬い影を避けます。ライトテントやソフトボックスが有効です。
- 光沢面は偏光フィルタやマットスプレーで一時的にマット化します。素材を傷めない方法を選んでください。
- コントラストの低い背景にするとアライメントが安定します。目標にマーカーを置くと良いです。
機材と配置の実務例
安定した写真を得るための機材配置例です。
- スマホ三脚+ホルダーでブレを抑えます。
- 回転台を使えば被写体を固定したまま角度を稼げます。
- リモートシャッターで押しブレを防ぎます。
- LiDAR搭載機は深度補助で有利ですが、必須ではありません。
メッシュ修正とウォータタイト化(Blender / Meshmixerの実務)
生成モデルはそのままではプリント向けにならないことが多いです。ここでは実務的な修正ワークフローを示します。
生成モデルの必須チェックポイント
モデルを修正する前に必ず確認する項目です。
- スケール差:既知寸法と比較してズレがないか確認します。
- 孤立アイランド:意味のない小塊は削除します。
- 穴・非マニフォールド:隙間は埋める必要があります。
- 法線:外向きで統一されているか確認します。
- 面の重複や内部ジオメトリ:削除します。
Blenderを使った基本的な修正手順
Blenderでの代表的な手順を順に示します。メニュー名はBlenderの標準表記です。
- ファイルをインポートして単位をMetric/mmに設定します。
- 既知寸法でスケールを合わせます(選択オブジェクトの「Item」プロパティで寸法確認)。
- 編集モードでSelect > Select All by Trait > Non Manifoldを使い非マニフォールドを検出します。
- 不要なアイランドを削除し、穴をFillやBridgeで埋めます。
- Mesh > Normals > Recalculate Outsideで法線を外向きにします。
- Solidifyモディファイアで薄い面に厚みを付けます。厚みは用途に応じテストで決定します。
- 最終的にFile > Export > Stlで書き出します。
注意:自動修復ツール(MeshmixerのInspectorやNetfabb)も併用すると時間短縮になりますが、結果は手動確認してください。
ウォータタイト化と中空化(SLA向け)
SLAでの実務的な中空化とドレイン設計の考え方です。
- 中空化の利点:材料削減と収縮や内部応力の軽減です。
- ドレン穴:直径2–5 mmを目安に複数設けますが、樹脂の粘度やプリンタの種類で最適径は変わります。必ず実機でテストしてください。
- 配置:低い位置や重心・内部形状を考えて樹脂が溜まりにくい経路を作ります。外観に影響しない位置を優先します。
- 注意:薄肉になり過ぎると強度不足や造形不良になります。厚みとサポート調整を再確認してください。
リトポロジー(リトポ)とポリゴン削減方針
ポリゴン数は編集・スライス処理・表示性能に影響します。方針を整理します。
減面と再トポの使い分け
減面と再トポの違いと選び方です。
- Decimation(減面):見た目を保ちながら三角形数を減らす簡便法です。短時間で効果を得られます。
- 再トポ(リトポロジー):ポリゴンフローを整えるための手法です。作業は手間ですが加工やアニメーションに向きます。
- 選択基準:単にプリントする場合は減面で事足りることが多いです。再トポは表面仕上げや後処理で有利です。
ポリゴン数の目安
目安値と考え方です。機材や用途で幅があります。
- プリント用は数万〜数十万三角形が一般的です。高精細SLAであれば多め、FDMは低めで十分です。
- スライサやPCの性能で扱える上限があるため、性能試験を行って最適領域を決めてください。
スライサ設定とプリント準備(FDM / SLA)
プリント方式ごとに出発設定と注意点を示します。値は出発点で、機材と材料で調整が必要です。
ファイル形式とスケールの確認
エクスポート前に確認する基本作業です。
- 形式:ジオメトリのみならSTL。テクスチャが必要ならOBJ/GLTFを選びます。
- 単位:STLに単位が無い場合があるため、インポート後に実寸を確認します。既知寸法でスケール合わせを行います。
- テスト表示:スライサに読み込んでバウンディングボックスや寸法を確認します。
FDM向けの出発設定と注意点
FDMでの代表的な出発設定と調整方針です。
- 壁厚:ノズル径の2倍以上を目安にします。ノズル0.4 mmなら0.8 mm以上が目安です。実際は素材収縮や接合部を考え、テストで確定してください。
- レイヤ高:ノズル径の約25–75%が一般的です。0.4 mmノズルなら0.1–0.3 mmの範囲を試します。
- 外周(Perimeter):通常2–3周。強度優先で4周以上。
- インフィル:一般品15%、機能部品で30–50%を目安にします。
- サポート:45°を超えるオーバーハングは注意。接触面積を小さくする設定で仕上げ損傷を抑えます。
- 冷却と温度:フィラメントのメーカー推奨温度と冷却を守り、ブリムやラフトを必要に応じ使用します。
SLA向けの出発設定と注意点
SLA特有の注意点と初期設定の目安です。
- レイヤ高:0.025–0.05 mmを出発点にしますが、樹脂と目的で変動します。
- オリエンテーション:剥離応力を分散するため20–45°の傾斜を検討します。
- サポート:接触点は小さくします。接触径・密度は表面品質と天秤です。
- 中空化とドレイン:必ず排樹脂経路を検討すること。ドレン穴は2–5 mmを目安にします。
- 洗浄・硬化:IPA洗浄や二次硬化は樹脂のSDSとプリンタのガイドに従ってください。
テストプリント、仕上げ、失敗対処
実際に出力して精度を検証し、仕上げとよくある失敗の対処法をまとめます。
テストプリントと精度検証
設定を確定するための段階的な検証フローです。
- 基本テストピース:20 mmキャリブレーションキューブ、穴ゲージ、薄肉サンプルを用意します。
- 測定:ノギスで外寸・内径を測り、スライス時に必要ならスケール補正を行います。
- 比較:向きやサポートの有無で複数パターンを出力し、最適条件を選定します。
仕上げ工程(FDM / SLA)
代表的な仕上げ手順と注意点です。
- FDM:サポート除去→粗研磨→細研磨→パテ→プライマー→塗装。熱処理やエポキシコートで表面改善します。
- SLA:IPA洗浄→サポート除去→ライトキュア→研磨→塗装。二次硬化やエポキシ処理で強度と外観を改善します。
- 素材相性:材料に応じて接着剤や塗料を選択してください。
よくある失敗と短期対処
代表的トラブルと即効で試せる対処法です。
- 写真不足/重複不足:追加撮影で角度を補います。
- 反射が多い:マット化や偏光フィルタを試します。
- 被写体移動:三脚・回転台を使い再撮影します。
- 非マニフォールド・法線裏返し:Blender等で検出・修正します。
- 過剰ポリゴンで重い:減面(Decimate)で負荷を下げます。
安全、廃棄、法的配慮(SLA樹脂と権利関係)
作業中の安全対策と廃棄、さらに権利処理についての注意点を示します。安全・法務は地域差があるため、必ず現地規則とSDSを確認してください。
SLA樹脂・IPAの安全管理
SLA樹脂と洗浄溶剤には健康リスクがあります。基本的な対策です。
- 保護具:ニトリル手袋、耐薬品ゴーグル(または保護メガネ)、作業用エプロンを使用します。
- 換気:作業室は十分に換気します。閉鎖空間では有機蒸気用の換気や呼吸保護具を検討します。
- 皮膚接触:樹脂が皮膚に付着したら直ちに石鹸と水で洗い、必要なら医療機関へ。
- 引火性:IPAは可燃性があるため火気厳禁で保管・使用します。
必ず使用する樹脂とIPAのSDS(安全データシート)を確認してください。
廃棄と環境配慮
廃棄方法は地域法規で異なります。一般的な注意点です。
- 未硬化樹脂:固化させてから廃棄するのが一般的です。未硬化液は危険廃棄物扱いになることがあります。
- 使用後IPA:樹脂が混入したIPAは回収して処理業者へ引き渡すか、法令に従い処理します。下水流出は避けます。
- 廃棄指針:メーカーのSDSと自治体の廃棄指針に従ってください。
法域依存の権利・肖像権・商用利用の対応例
スキャンは法的リスクがあります。地域差が大きいため具体例と参照先を示します。
- 著作権:市販フィギュアや著作物を無断でスキャンし複製・配布・販売すると権利侵害になる可能性があります。商用利用は必ず許諾を得ます。
- 肖像権:人物スキャンは本人の同意が必要です。未成年は保護者同意を取得します。
- 具体的対応例:商用化する場合は書面による使用許諾契約を交わす。展示や販売の前に権利者に確認する。
- 参考:や各国の著作権庁、WIPOのガイドラインで法域ごとの違いを確認してください。
法的解釈が必要なケースでは専門の弁護士に相談してください。
トラブルシューティング(代表的問題と短期解決)
代表的な問題を症状別にまとめ、短時間で試せる対処を示します。
写真不足や重複不足
仮モデルで欠損が出るケースの対処法です。
- 原因:オーバーラップ不足や撮影角度の偏り。
- 対処:不足個所を中心に追加撮影し、上方・下方の角度も撮ります。
反射・透明素材のノイズ
表面光沢で点群が乱れる場合の対処法です。
- 原因:反射により特徴点が一致しない。
- 対処:偏光フィルタ、拡散照明、または一時的なマットスプレーで表面を処理します。
非マニフォールド・裏返し法線
メッシュのエラー検出と修復の流れです。
- 原因:スキャン欠損や生成アルゴリズムの失敗。
- 対処:BlenderやMeshmixerで非マニフォールドを検出し穴埋め、法線を再計算します。必要ならNetfabb等の修復ツールを使います。
ファイルが重くて動作が遅い
ポリゴン過多でPCやスライサが遅くなる場合の対処です。
- 対処:減面(Decimate)で段階的に削減し、見た目と実用性のバランスを確認します。再トポが可能なら実施します。
参考リンクと出典
以下は公式や信頼できるリソースへの参照例です。ツールや素材の最新情報は各公式ページで確認してください。
- RealityScan(公式アプリ / ドキュメント): https://www.realityscan.app/
- Blender(公式): https://www.blender.org/
- Meshmixer: http://www.meshmixer.com/
- Netfabb(Autodesk): https://www.autodesk.com/products/netfabb/overview
- PrusaSlicer: https://www.prusa3d.com/prusaslicer/
- Cura(Ultimaker): https://ultimaker.com/software/ultimaker-cura
- Chitubox: https://www.chitubox.com/
- Lychee Slicer: https://mango3d.io/lychee-slicer/
- Agisoft(フォトグラメトリ参考): https://www.agisoft.com/
- Meshroom / AliceVision: https://alicevision.org/meshroom
- Formlabs(材料とSDS参照): https://formlabs.com/materials/safety-data-sheets/
- : https://creativecommons.org/
- WIPO(国際的な知的財産情報): https://www.wipo.int/
※ 各リンク先の情報は随時更新されます。使用する機器・材料のSDSとメーカーガイドを必ず確認してください。
まとめ
RealityScanとフォトグラメトリを起点に、スマホ撮影からSTL化、FDM/SLAでの試作までを実務的に進めるための要点をまとめます。撮影品質(枚数・重複・照明)が結果を左右します。RealityScanでまずは低品質で試作して問題箇所を洗い出し、Blender等でウォータタイト化とスケール合わせを行ってからスライサ設定を詰めます。SLA樹脂やIPAはSDSを確認し適切な個人防護具と廃棄手順を守ってください。法的な権利処理は法域依存のため、商用化の前に必ず許諾や専門家の確認を行ってください。