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1. 前提条件と必須ソフトウェア
OpenClaw を快適に利用するには、以下の要件を満たしていることが前提です。
- OS – Windows 10(バージョン 2004 以降)または Windows 11。
- CPU の仮想化支援機能 – Intel VT‑x または AMD‑V が BIOS/UEFI で有効になっていること。
これらが確認できたら、次に必要なツールをインストールします。重複した手順を省き、一度だけ実行すれば完了するよう整理しています。
1.1 必要なツールの概要
| ツール | 用途 | 推奨バージョン |
|---|---|---|
| WSL2 + Ubuntu | Linux 環境を Windows 上に構築し、systemd 対応サービスやパッケージ管理を利用するため | 最新の Ubuntu LTS(2026 年時点で 22.04 系) |
| Node.js (LTS) | OpenClaw 本体とプラグインの実行エンジン | 「最新の LTS」(例: v20 系) |
| Git for Windows | ソースコード取得・更新に必須 | 最新安定版(2026 年時点で 2.44 系) |
2. ツールのインストール手順
以下の手順は、管理者権限の PowerShell から実行してください。各コマンドは一度だけ実行すれば十分です。
2.1 WSL2 と Ubuntu の導入
WSL と Ubuntu をまとめてインストールします。
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# 管理者 PowerShell で実行 wsl --install -d Ubuntu |
インストールが完了したら、再起動の指示が出た場合はその通りに Windows を再起動してください。
2.2 Node.js LTS のインストール
- https://nodejs.org/ja/download/ にアクセスし、「Windows Installer(LTS)」をダウンロードします。
- インストーラ実行時は 「Add to PATH」 に必ずチェックを入れ、デフォルト設定で完了させます。
⚠️ バージョン指定の注意
本稿では具体的なバージョン番号を書きません。「最新 LTS」を常に取得する方針とし、将来のリリースでも手順が変わらないようにしています。
2.3 Git for Windows のインストール
- https://git-scm.com/download/win から最新版をダウンロードします。
- インストーラのオプションで 「Git from the command line and also from 3rd‑party software」 を選択し、PATH に自動追加させます。
インストールが完了したら、PowerShell で次のコマンドを実行してバージョン情報が表示されることを確認してください。
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git --version node -v npm -v |
3. WSL2 環境のセットアップ(systemd 有効化含む)
WSL2 上で OpenClaw を動かす場合、systemd が必要になるケースが多くあります。ここでは初心者向けに、systemd の有効化手順を段階的に解説します。
3.1 WSL2 の基本設定と Ubuntu の初期化
WSL を起動し、Ubuntu にログインしたら以下のコマンドでパッケージリストを最新化します。
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# パッケージ情報取得とアップデート sudo apt update && sudo apt upgrade -y # 必要なビルドツール類をインストール sudo apt install -y build-essential curl |
3.2 systemd を有効化する手順
/etc/wsl.confの作成
bash
sudo tee /etc/wsl.conf > /dev/null <<'EOF'
[boot]
systemd=true
EOF- WSL の完全再起動
Windows 側の PowerShell(管理者)で以下を実行します。
powershell
wsl --shutdown - systemd が有効か確認
再度 Ubuntu を起動し、次のコマンドがエラーなく出力されれば完了です。
bash
systemctl status
ポイント
-wsl.confの記述ミスは最も多い原因です。スペースや改行に注意してください。
- 再起動後、systemctlが利用可能になるまで数秒かかることがあります。
4. OpenClaw 本体のインストール
WSL2 とネイティブ Windows のどちらでも共通で使用できる手順です。以下の流れに沿ってリポジトリを取得し、依存パッケージをインストールします。
4.1 リポジトリのクローン
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git clone https://github.com/official/OpenClaw.git cd OpenClaw |
ヒント
クローンしたディレクトリは必ず.gitignoreに含め、機密情報が混入しないようにしましょう。
4.2 依存パッケージのインストール
- 推奨:ロックファイル (
package-lock.json) に忠実なnpm ciを使用します。 - カスタマイズや開発中は
npm installでも構いません。
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npm ci # 本番環境向けの高速インストール |
4.3 初回起動の確認
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npm start |
ターミナルに次のようなメッセージが表示されたら、サーバーは正常に立ち上がっています。
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OpenClaw server listening on http://localhost:3000 |
5. 設定ファイルと API キーの安全な取り扱い
OpenClaw は環境変数と config.yaml(または .claw/config.yaml)で動作に必要な情報を取得します。機密情報は決してリポジトリにコミットしない ことが最重要です。
5.1 .env のサンプルと注意点
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# .env – ルートディレクトリに配置 OPENAI_API_KEY=sk-xxxxxxxxxxxxxxxxxxxx # ← 実際のキーを入力してください DISCORD_BOT_TOKEN=YOUR_DISCORD_BOT_TOKEN |
セキュリティ上のベストプラクティス
.envを 必ず.gitignoreに追加 して、Git の管理対象外にします。- 本番環境ではキーを シークレットマネージャー(例: Azure Key Vault、AWS Secrets Manager)に保存し、起動時に読み込む方法も検討してください。
- 誤って公開リポジトリへプッシュした場合は、すぐにキーをローテーションし、Git の履歴から削除する(
git filter-repo等)。
5.2 config.yaml のサンプル
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# config.yaml – プロジェクト直下または .claw/ 配下に配置 agents: - name: email_organizer description: "未読メールを自動でラベル付け・整理する" trigger: "every 1h" actions: - type: fetch_mail provider: gmail - type: classify model: gpt-4o-mini - type: apply_label - name: discord_notifier description: "特定キーワードが投稿されたら通知する" trigger: "on_message" actions: - type: monitor_channel channel_id: 1234567890 - type: send_reply message: "🔔 キーワードが検出されました!" |
重要
config.yamlにも機密情報(例:API エンドポイントやシークレットトークン)を書かないでください。すべては.env経由で注入する設計が推奨されています。
6. 初回起動とタスク実行の流れ
設定ファイルを作成したら、以下の手順で OpenClaw を起動し、エージェントが正しく動作するか確認します。
6.1 アプリケーションの起動
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npm start # WSL2 のターミナルでも Windows PowerShell でも可 |
ブラウザで http://localhost:3000 にアクセスし、管理画面が表示されれば成功です。
6.2 タスク実行例(メール整理・Discord 通知)
| エージェント | 実行タイミング | 動作概要 |
|---|---|---|
email_organizer |
毎時 1 回 | Gmail API から未読メールを取得 → GPT‑4o‑mini が内容分類 → ラベル付け |
discord_notifier |
メッセージ受信時 | 指定チャンネルのメッセージを監視し、キーワード検出で自動返信 |
実際に Gmail アカウントと Discord ボットトークンが正しく設定されていれば、ターミナル上に 「Processed 23 new emails」 や 「Sent reply to channel #general」 といったログが出力されます。
7. トラブルシューティング
以下はインストールや起動時によく遭遇するエラーと、その対処法です。順に確認して問題を切り分けてください。
7.1 権限エラー(EACCES: permission denied)
- 原因:npm がグローバルディレクトリへ書き込めない、または
node_modulesの権限が不適切。 - 対策
- PowerShell / コマンドプロンプトを 管理者として再起動 する。
- WSL 内なら
chmod -R 755 node_modulesを実行し、所有者を自分に変更する。
7.2 systemd が起動しない
- 原因:
/etc/wsl.confの記述ミス、もしくは WSL バージョンが古い。 - 対策
cat /etc/wsl.confで内容を確認し、[boot]とsystemd=trueが正しく記載されているかチェック。wsl --shutdown後に再度 Ubuntu を起動し、systemctl statusが表示されることを確認。- WSL のバージョンが 2.0.12 以上であることを
wsl -l -vで確認し、古い場合は Windows Update または公式サイトから最新版を取得。
7.3 ネットワーク/プロキシ環境でのタイムアウト
- 原因:企業内プロキシが Git や npm の通信を遮断。
- 対策
bash
export http_proxy=http://proxy.example.com:8080
export https_proxy=https://proxy.example.com:8443
npm config set proxy http://proxy.example.com:8080
git config --global http.proxy http://proxy.example.com:8080
上記を.bashrc(WSL)や PowerShell のプロファイルに永続化してください。
7.4 API キーが無効と表示される
- 原因:
.envが正しく読み込まれていない、またはキーの形式が誤っている。 - 対策
- アプリ起動直前に
echo $OPENAI_API_KEY(WSL)やecho %OPENAI_API_KEY%(PowerShell)で環境変数を確認。 - キーに余分な空白や改行が入っていないかチェックし、必要なら再コピーして保存。
8. 次のステップと継続的メンテナンス
- サンプルエージェントの探索 –
examples/ディレクトリに多数のテンプレートが用意されています。自社業務フローに合わせてカスタマイズしましょう。 - プラグインマーケットプレイス – 公式サイトから追加機能や外部サービス連携プラグインを取得できます。導入は
npm install <plugin>で完了です。 - 定期的なアップデート – 最新のバグ修正とセキュリティパッチを適用するために、次のコマンドでリポジトリと依存パッケージを更新します。
bash
git pull origin main && npm ci
- CI/CD の構築 – GitHub Actions などで自動テスト・デプロイパイプラインを作ると、変更があった際に即座に本番環境へ反映できます。
付録:用語集
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| WSL2 | Windows Subsystem for Linux の第 2 世代。軽量な仮想マシン上で Linux カーネルを実行します。 |
| systemd | Linux の init システム兼サービス管理デーモン。OpenClaw のバックグラウンドジョブに必須です。 |
| .env | 環境変数を定義するテキストファイル。機密情報はここに記載し、コードベースから分離します。 |
| config.yaml | OpenClaw のエージェントやトリガー設定を YAML 形式で記述したファイルです。 |
以上が Windows(WSL2 またはネイティブ)上で OpenClaw を構築・運用するための包括的な手順です。安全なキー管理と systemd の有効化 に特に注意しながら、まずはサンプルエージェントを動かしてみてください。疑問点やエラーが残る場合は、本稿のトラブルシューティングセクションをご参照いただくか、公式リポジトリの Issue ページで質問してください。 Happy Claw!