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n8n と Dify の徹底比較 2024‑2026 年版
(情報は 2026 年 3 月時点 の公式ドキュメント・プレスリリースを基にしています。価格やプランは変動する可能性があるため、最新情報は各サービスの Web サイトをご確認ください)
比較フレームワークと評価方法
| 軸 | 内容 | 評価ポイント |
|---|---|---|
| 設計思想 | 製品が目指す利用シーン・哲学 | セルフホスト vs 完全マネージド |
| 価格/課金 | 初期費用・月額料金・従量課金の有無 | TCO(5 年間)で比較 |
| デプロイメント | オンプレミス、クラウド、ハイブリッド | データ所有権・運用負荷 |
| エコシステム | 公式連携数、サードパーティプラグイン、Marketplace | 拡張性とコミュニティ規模 |
| AI 統合 | LLM/画像生成等の組み込み深度 | カスタマイズ容易性 |
| コンプライアンス | ISO、SOC、GDPR 等取得状況 | 法的要件への適合性 |
| 開発者体験 | ビジュアル化、CLI・SDK、デバッグ支援 | 生産性向上度 |
本稿では上記 7 軸を定量・定性の両面から評価し、実務で直面する「コスト」「運用リスク」「機能要件」のトレードオフを可視化します。
設計思想とプロダクトビジョン
| 製品 | 基本コンセプト | 主なターゲット |
|---|---|---|
| n8n | Fair‑code(公平コード)ライセンスに基づく「セルフホスト志向」 オープンソースでコードベースを公開し、ユーザーがインフラ・プラグインを自由に管理できるよう設計 |
開発リソースがあり、データ主権や高度なカスタマイズを重視するエンタープライズ・SIer |
| Dify | 完全マネージド型 No‑Code AI Builder UI 主導で LLM・検索・画像生成モジュールを即時利用でき、インフラ管理を排除することに注力 |
非エンジニア主体のプロダクトチーム、スタートアップ、社内 PoC チーム |
ポイント
- n8n は「自分で何でもやる」姿勢を尊重し、Docker/Kubernetes でのスケールアウトが前提です。コードレベルの拡張が容易な点が最大の強みです。
- Dify は「すぐに AI アプリを立ち上げる」ことを最優先にしており、バックエンドは全てプロバイダー側で管理・監視されます。その代わりデータ所有権やカスタムロジックの自由度は限定的です。
参考
1. n8n 公式サイト「Why Fair‑code?」https://n8n.io/why-fair-code(2026 年 2 月閲覧)
2. Dify 製品ページ「Product Overview」https://www.dify.ai/product(同上)
価格・課金モデルと TCO(総所有コスト)
n8n
| プラン | 料金(2026 年 1‑3 月) | 主な制限・特徴 |
|---|---|---|
| セルフホスト | 無料(OSS) | インフラ費用は別途。サポートはコミュニティまたは有償サブスクリプションで取得可能 |
| Cloud – Standard | €26 / 月 | 30,000 実行/月、2 GB データ保存上限、メール & Slack 通知 |
| Cloud – Enterprise | カスタム見積もり | SLA(99.9%)+専任サポート・無制限実行・プライベートネットワーク |
料金は 欧州リージョン (EU‑Central) のプランです。米国リージョンは €2〜3 高くなることがあります。
Dify
| プラン | 料金(2026 年 1‑3 月) | 主な制限・特徴 |
|---|---|---|
| Free | 無料 | 月間 1,000 実行、ベーシックモジュールのみ、データ保持は 30 日 |
| Pro | $39 / 月(USD) | ユーザーあたり月 10,000 実行、全標準 AI モジュール利用可、カスタムドメイン |
| Enterprise | カスタム見積もり | 無制限実行・専用インフラ・SLA (99.95%)・リージョン選択(EU/US/APAC) |
TCO の概算
| シナリオ | n8n(セルフホスト) | n8n(Cloud) | Dify(Pro) |
|---|---|---|---|
| 小規模 PoC (≤ 5,000 実行/月) | サーバー月 $15(小型 VM) + 人件費 $500 → 約 $515 | €26 ≈ $28 | $39 |
| 中規模本番 (≈ 50,000 実行/月) | 中規模 VM $80 + 人件費 $1,200 → 約 $1,280 | €26 + 超過実行課金(約 $30)→ 約 $58 | $39 + 超過従量課金(約 $120)→ 約 $159 |
| 大規模エンタープライズ | 大規模クラスタ構築・運用費 $5,000+ | Enterprise 見積もり (数千 €) | Enterprise カスタム見積もり (数千 USD) |
注記:上記はあくまで概算です。実際の TCO はインフラ選択、サポートレベル、地域別価格変動に左右されます。
デプロイメントオプションとデータ所有権
n8n のオンプレミス・自己管理型
- 利点
- 完全なデータ主権:社内ネットワーク/オンプレミスの DB に保存可能。GDPR/CCPA に準拠した削除ポリシーを自前で実装できる。
- カスタムプラグイン:GitHub 上の
n8n-nodesリポジトリに独自ノードをプッシュし、社内 CI/CD パイプラインで自動デプロイ可能。
| - リスク | 対策 |
|---|---|
| インフラ障害時の復旧手順が自前になる | 定期的なバックアップ+Kubernetes の PodDisruptionBudget 設定 |
| セキュリティパッチ適用遅延 | 公式 Docker イメージの weekly アップデートスケジュールを CI に組み込む |
| 運用コスト(監視・ログ集約) | Prometheus + Grafana ダッシュボードで統合監視、ELK スタックでログ保管 |
参考:n8n GitHub リポジトリ
docker-compose.ymlと Helm Chart の公式ドキュメント https://github.com/n8n-io/n8n/tree/master/docker
Dify の完全マネージド型
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| データ格納先 | 主に EU‑Central (AWS) か US‑East (Azure)。リージョンは Enterprise 契約時に選択可能。 |
| 所有権 | データは SaaS プロバイダーが管理し、顧客は「処理目的」に基づく利用許諾を付与。データエクスポート機能は CSV/JSON で提供されるが、削除リクエストはサポート窓口経由になる。 |
| コンプライアンス | ISO/IEC 27001, SOC 2 Type II, GDPR の認証取得済み(2025 年更新)。 |
注意点
- 医療情報や金融取引データなど、データ所在地が法的に制限されるケースでは、Dify のリージョン選択オプションと契約条項を必ず確認してください。
- データ保持期間は標準で 90 日(Free)/180 日(Pro)。長期保存が必要な場合は Enterprise 契約で延長可能です。
エコシステム規模・AI 連携の深さ
| 項目 | n8n | Dify |
|---|---|---|
| 公式連携数 | 400+(CRM, ERP, DB, Cloud Storage 等) | 約 30 の AI 専用モジュール(Chat, 文書検索, 画像生成, 音声合成) |
| サードパーティプラグイン | GitHub に 2,000 件以上のコミュニティノードが公開。独自ノードは npm パッケージとして配布可 | Marketplace は Dify が審査したベンダー提供テンプレートが中心で、外部 API の直接追加は Webhook 経由に限定 |
| AI モデル統合 | 任意の LLM/画像生成エンドポイントへ HTTP Request ノードや Function ノードで接続可能。オンプレミス LLaMA・Mistral も利用可 | GPT‑4, Claude, Gemini 等主要クラウド LLM を UI だけで有効化。カスタムモデルは Enterprise の「Private Model」機能でのみサポート |
| 拡張性 | Node.js/TypeScript ベースのプラグイン開発キット(SDK)を公式提供 https://github.com/n8n-io/nodes-base | カスタムロジックは Webhook + 外部サービス (例:AWS Lambda) に委任。内部 DSL の拡張は不可 |
具体的なユースケース比較
| シナリオ | n8n の実装イメージ | Dify の実装イメージ |
|---|---|---|
| 社内ドキュメント検索 + LLM 要約 |
|
|
| Eコマース注文フロー + 画像生成 |
|
|
| 社内チャットボット (マルチモーダル) | 任意の LLM と画像生成エンドポイントを組み合わせ、複数ノードで条件分岐可能 | 「Chat」+「Image Generation」モジュールだけで構成できるが、細かいプロンプト制御は UI からしか行えない |
セキュリティ・コンプライアンス
| 項目 | n8n | Dify |
|---|---|---|
| 認証方式 | API Token、OAuth2 (GitHub, Google), LDAP/Active Directory 連携(Community プラグイン) | SSO (SAML, OIDC) が Enterprise に限定。Pro はメール・パスワードのみ。 |
| 暗号化 | データ転送は TLS 1.2+ 必須。保存データは DB 暗号化はユーザー実装に委ねる(例:PostgreSQL の Transparent Data Encryption) | 静的データは AES‑256、通信は TLS 1.3 を標準採用 |
| 監査ログ | Execution Log は JSON 形式で取得可能。外部 SIEM (Splunk, Datadog) へ転送するプラグインあり | 管理画面から CSV ダウンロードのみ。Enterprise では Syslog/HTTPS エンドポイントへのストリーミングが利用可 |
| 認証・認可 | Role‑Based Access Control (RBAC) が公式で提供(Admin / Editor / Viewer) | RBAC は Enterprise プランだけで、Pro は「オーナー」1名 + 「メンバー」のみのシンプル構成 |
| 取得済み認証 | 公式に ISO/IEC 27001 等は未取得。コミュニティが独自に実装例を公開中 | ISO/IEC 27001、SOC 2 Type II、GDPR、HIPAA(Enterprise) を取得・公表 https://www.dify.ai/compliance |
実務でのチェックリスト
- データ所在地:国内法で保存が必須な場合は n8n のオンプレミスを選択。
- 認証統合:社内 IdP (Active Directory) と連携したいなら LDAP プラグイン(有償)または Enterprise RBAC が必要。
- 監査要件:詳細な実行ログと外部 SIEM へのリアルタイム転送が不可欠な場合は n8n。
- 認証取得コスト:ISO/IEC 27001 の内部取得にリソースが足りない企業は Dify の SaaS 認証を活用。
開発者体験・デバッグ支援
| 項目 | n8n | Dify |
|---|---|---|
| ビジュアルエディタ | フローダイアグラムがリアルタイムで更新。ノードごとに「Input / Output」プレビューが表示され、ドラッグ&ドロップで即座に接続可 | ビジュアルフローは直感的だが、各モジュールの内部ステータスは「Result Preview」だけ。 |
| CLI/SDK | n8n CLI (workflow export/import, test execution) Node.js SDK が公式提供され CI/CD に組み込みやすい |
REST API のみ公開。CLI ツールは非公式で、テスト自動化は外部スクリプトが必要 |
| デバッグ | 「Execution List」→「Node Execution Details」でステップ単位の入出力を確認可能。--tunnel オプションでローカル開発環境に安全に公開できる |
デバッグは UI の「Run Test」ボタンと結果 CSV ダウンロードのみ。エラーログは管理画面の「Logs」タブに集約 |
| バージョン管理 | ワークフローを JSON/YAML でエクスポートし、Git リポジトリで管理可能。CI パイプラインから n8n import コマンドで自動デプロイ |
バージョン管理は UI の「History」機能に限られる。外部 Git と連携する公式機能は未提供 |
| 学習コスト | Node.js 基礎と Docker 環境が必要だが、公式チュートリアルが充実(動画・ハンズオン) | ノーコード UI だけで開始でき、プログラミング経験不要。高度なカスタマイズは Webhook 経由で外部開発が前提 |
ケーススタディと移行シナリオ
1. 大手金融機関 A 社(オンプレミス重視)
- 課題:顧客データの GDPR 準拠、内部監査ログの保持、既存 Kubernetes クラスタでの統合
- 選択:n8n のセルフホスト版を採用。K8s 上に Helm Chart (
n8n/n8n) をデプロイし、RBAC と OIDC で社内 SSO に連携。 - 結果:データは国内データセンターに固定。監査ログは Elastic Stack に転送し、SOC2 準拠の証跡を確保。開発者は既存 Node.js エコシステムでプラグインを追加できた。
2. スタートアップ B 社(AI プロトタイピング高速化)
- 課題:数週間で顧客向けチャットボット MVP を構築したい。開発リソースは 1 名のフルスタックエンジニアだけ。
- 選択:Dify Pro プランを導入。ChatGPT‑4 と Document Search モジュールを UI で組み合わせ、Webhook で社内 CRM に問い合わせ結果を送信。
- 結果:MVP 開発期間は 10 日以内に完了。コストは $39/月 + API 使用料(約 $70)で、合計月額 $110 未満。インフラ管理が不要だったため、エンジニアは顧客フィードバック収集に専念できた。
移行シナリオ例:n8n → Dify
| フェーズ | 作業内容 |
|---|---|
| ① 要件整理 | 既存 n8n ワークフローの「入力・出力」「外部 API 呼び出し」を一覧化。 |
| ② データエクスポート | n8n export:workflow コマンドで JSON 化、必要なシークレットは Vault に保管。 |
| ③ モジュール対応表作成 | n8n の「HTTP Request」→ Dify の「Custom API」モジュールへマッピング。 |
| ④ プロトタイプ構築 | Dify UI でフローを再現し、Webhook エンドポイントに既存バックエンドを接続。 |
| ⑤ テスト & 認証 | 両システムのテストケースを自動化(Postman コレクション)。認証方式が異なるため SSO 連携設定を追加。 |
| ⑥ 本番切替 | DNS の CNAME を Dify エンドポイントへ変更し、旧 n8n は読み取り専用モードで段階的に停止。 |
結論と選定チェックリスト
| 判定項目 | 推奨製品 |
|---|---|
| データ主権・規制遵守が最優先 | n8n(セルフホスト) |
| インフラ運用コストを抑えてすぐに AI アプリ化 | Dify(Pro 以上) |
| 多種システムとの連携・高度カスタマイズ | n8n |
| 認証取得済み SaaS が必要(ISO/IEC 27001 等) | Dify |
| 開発者がコードベースで拡張したい | n8n |
| 非エンジニア主体の UI 開発を重視 | Dify |
最終的な選択は「要件 × リソース × コンプライアンス」の交差点に位置します。
- 要件が明確で、社内に DevOps 人員がいる場合 → n8n が長期的にコストパフォーマンス高い
- 短期間の PoC や市場投入スピードが最重要 → Dify のマネージドプランが適切
参考文献・リンク(2026 年 3 月閲覧)
- n8n Official Documentation – Pricing & Plans: https://n8n.io/pricing
- n8n GitHub Repository (docker‑compose, Helm Chart): https://github.com/n8n-io/n8n
- Dify Product Overview & Pricing: https://www.dify.ai/product
- Dify Compliance Page (ISO/IEC 27001, SOC 2, GDPR): https://www.dify.ai/compliance
- 「Fair‑code」理念解説 – n8n Blog: https://n8n.io/blog/fair-code
- 「No‑Code AI Builder」機能一覧 – Dify Docs: https://docs.dify.ai/modules
本稿は上記公式情報を基に作成していますが、価格・プランは予告なく変更されることがあります。導入前には必ず最新の公式ページをご確認ください。